ライター・カメラマン・編集者について introduction

Introduction
Free editor & Free writer
若井憲 Ken.Wakai

経歴ってほどのものでありませんが

もともとは理系のエンジニアだった旅行ライター

もと理科系エンジニアで、子供の頃は国語が大の苦手だったという、ボクは編集者とは思えない、ちょっと変わった経歴を持っています。しかし、本を読むことは大好きで、通学の電車で読書に夢中となり、降りる予定の駅を乗り過ごすことは何度もありました。

学生の頃は暇さえあれば全国を旅して歩き回り、大学を卒業していったんはエンジニアとして職につきましたが、やっぱり旅のオモシロさを忘れることができず、結局、会社を辞め、旅行業界への転職を目指します。その志望動機は実に単純、毎日旅行ができるから、ただそれだけでした。もちろん、旅行業界はそんなに甘くはありませんでしたが、若さゆえの愚かさでした。

旅行業界に転職するための資格試験を受け、その結果を待つ間、アルバイトでもと開いた求人誌でみつけたのが「旅行ガイドブックの編集」という仕事でした。当時、編集者といえば人気の職業。編集の知識はゼロ、文章を書くのは相変わらず苦手なボクが採用されるハズがないと思っていましたが、旅行に関する知識の豊富さだけで、奇跡的に採用してもらいました。

人と違うことをすれば道は開ける!?

周りの人間は当然、すべて文系出身。ボク一人が理系出身でした。この理系と文系、自分ではあまり意識していませんでしたが、物事の捉え方が少々違うようです。

ある日、新シリーズの観光ガイドブックの企画のアイデア出しを言われ、ボクは内容を考えるのは後回しにして、他社のガイドブックを全部買ってきて、それぞれの重さを測り、そこに一定の法則を見出したのです。そこから外見を決めて中味を攻める、そのような展開で企画を提案したところ、「キミのような考え方をする人間は初めてだ」と会社の上層部にウケて、正社員への道が開けたのでした。

その後、東京の出版社で旅行雑誌の編集を10年以上行い、上司にも恵まれて編集者としてはそれなりの実力をつけることができました。ただ、だんだんデスクワークが増え、現場(旅行先)との距離が遠のいていくのが寂しくもあり、いっそ、現場(観光地)側からの地に足が着いた情報発信をしてみたら面白いことができるんじゃないか、そんなこと考えるようになったのです。

ローカルメディアの面白味にハマる

そのころ、石川県金沢市にある印刷会社から「シニア向け雑誌の編集長をやらないか?」と声をかけていただき、金沢という観光地へ家族を連れて移住することになりました。今から20年以上前のことです。移住は家族の理解を得るのが難しいとよく言われますが、うちはカミさんが一度、金沢に旅行できたことがあり、「あんな素敵なところに住めるのなら」と、反対するどころか、大賛成してもらいました。

北陸の季刊誌の編集長を務めながら、ほかにも印刷物に限らず、デジタル媒体も使い北陸の魅力情報発信の手伝いをして、金沢の食文化や石川県の里山里海の文化など、地域に埋もれつつある自然や文化に関する調査事業も手がけるようになりました。そして、深く地域の魅力を探り、発信する面白さにハマってしまい、さんざん仕事でやっても飽き足らず、家に帰って個人のブログでもそんな記事を毎晩書くという日々を過ごしていました。


自分が楽しまなければ楽しい情報なんて発信できない

地方の印刷会社の仕事は、限られた予算のものも多く、できることはなんでも自分でしました。取材して記事を書いたり撮影をしたりすることは当然、時にはレイアウトやイラスト描きまでこなすこともありました。

ボクがここに来たころは、「そもそも編集者って何をする人?」って聞かれたことがよくありました。情報発信の中味にこだわるより、とにかく作業を進めてほしい! そんな感じでした。でもそのおかげでボクは編集者としての厚みを増すことができた、そう思っています。

そして「自分が楽しまなければ楽しさなんて伝える事ができない」、それを信条にしてきました。人からはよく「楽しそうなお仕事ですね」と言われますが、実際はさておき、そう思われることが本望なのです。


北陸の魅力をもっと発信していきたい

2017年、四苦八苦しながらも13年以上続けてきた季刊誌がついに休刊となりました。ここ数年は「編集が素晴らしい雑誌」という、ボクにとってはこの上ない評価をいただくことが増えてきた矢先でしたので、とても残念ですが、これを機に、いま一度、編集者として、そして地の利を生かしたライター兼カメラマンとして、独立して新しい道を進むことにしました。

紆余曲折してここまで来ましたが、そのおかげで人とは違う編集者になれたのではないか、そんなふうに思っています。

これからも、北陸から楽しい情報を、ボクが率先して楽しみながら皆さんにお伝えしていくつもりです。北陸への恩返しの気持ちも込めて。

わかい・けん

神奈川県川崎市生まれ。弘済出版社(現:交通新聞社)にて、観光ガイドブックなどの書籍編集部、月刊『旅の手帖』編集部、JRグループのシニア会員誌『ジパング倶楽部』編集部を経て、石川県金沢市にある印刷会社から誘われ、1999年に金沢市に移住。その会社の出版部門に所属し、季刊誌『自然人』の編集長を務めた。季刊誌の休刊に伴い、2018年4月、フリーとなる。現在は石川県金沢市に拠点を置き、雑誌やWebマガジンなどのライター&カメラマンとして北陸各地の取材を行なっている。編集者としての経験は30年以上。国内旅行業務取扱主任者(国内旅行業務取扱管理者)、一般旅行業務取扱主任者(総合旅行業務取扱管理者)。