祝! 北陸新幹線敦賀延伸 金沢でお花見〜人気スポットから穴場までおすすめ26選〜

金沢やその周辺でお花見をするなら何処?
旅行雑誌やWEBで北陸の桜を紹介している
金沢在住で自称「桜オヤジ」のフォトライターが、
おすすめのお花見スポットをピックアップします。
この春、北陸新幹線敦賀開業で注目を集める金沢。
観光でいらっしゃる方もぜひ、お楽しみください。

兼六園(金沢市兼六町)

四季折々の美しさがある兼六園だが、桜が満開の頃はやっぱり格別。ソメイヨシノは言うに及ばず、桜の種類が多いことでも知られる。兼六園熊谷、旭桜、兼六園菊桜など、4月下旬まで桜の花見が楽しめる。ソメイヨシノ開花時期に行うライトアップも必見。日本さくら名所100選。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

金沢城公園(金沢市丸の内)

金沢城公園の桜といえば、ライトアップされるとお堀の水面に桜が映ってとっても幻想的な内堀の桜並木が人気。また、国の重要文化財の石川門とのツーショットも定番。石川門を見上げる芝生広場(百間堀園地)は例年、花見客で一杯になる。そのほか、兼六園の桜が一望できる丑寅櫓跡もおすすめ。

なお、城内の新丸広場にはさまざまな種類の桜の木が植えられていて、ここは飲食もOK。意外と知られていない、穴場のお花見スポットだ。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

浅野川・梅ノ橋周辺(金沢市東山ほか)

金沢には、浅野川と犀川という2つの大きな川が流れており、浅野川を女川、犀川を男川とも呼ぶ。そこはかとなくはんなりとした雰囲気が感じられる浅野川は、浅野川大橋の上流と下流に桜の並木が続く。
ユーミンの「花紀行」という曲は、この辺りの桜をモチーフに書かれた曲とか。ただ、そもそも「花紀行」を知らない人が多いので、ややマニアックな話題かも。
上流の梅ノ橋周辺は、木造風の絵になる橋と桜、大正ロマンを感じる国登録有形文化財の浅野川大橋と桜の競演が美しい。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

浅野川・主計町茶屋街(金沢市主計町)

浅野川大橋を挟んで下流側・主計町(かずえまち)では、陽が落ちるとガス灯とぼんぼりの灯りに桜の花が照らし出されて、妖艶なムード。浅野川大橋寄りの桜の木が1本、病気になってしまい、今は小さな苗木に植え変わっている。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

犀川・桜橋周辺(金沢市中川除町ほか)

男川の別名がある犀川。犀川大橋から上流の桜橋にかけては金沢出身の文豪・室生犀星が愛した散歩道で「犀星のみち」と呼ばれており、または両岸に見事な桜並木が続く。桜橋のすぐ近くにある桜坂の途中からは、犀川河畔の桜並木を見下ろすことができる。観光客の多い浅野川とは対照的に、こちらは桜を眺めながらジョギングや散歩するなど、市民の憩いの場という色合いが濃い。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

犀川緑地(金沢市法島町)

犀川は河口から上流の大桑地区までの河川敷が公園として整備されていて、「いしかわ子ども交流センター」がある法島地区には堤防上に見事な桜並木が続く。雪をいただく山々を望む広い河川敷や桜の花に包まれる児童公園、静かな散策道もあり、バリエーション豊富な花見が楽しめる。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

慶恩寺しだれ桜(金沢市石引2-5-30)

小立野寺院群にある真宗大谷派の寺院。昭和18年(1943)に植えられたシダレザクラは樹高16m、幹回2.5m、枝巾12mで見事。

例年の見頃(シダレザクラ):4月上旬

二十人坂(金沢市石引2)

慶恩寺から歩いていけるここは知る人ぞ知る桜の名所。藩政時代、足軽二十人組が住んでいたことからこの名がついた。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

卯辰山四百年の森(金沢市末広町)

前田利家の金沢入城400年を記念して昭和57年に作られた。約250本の桜が植栽され、谷一面が桜色に染まる。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

卯辰山見晴らし台(金沢市東御影町)

浅野川上流部や金沢城や金沢駅周辺、日本海まで見渡せる展望芝生広場。春は桜越しに雪をいただく県境の山々やまちなかを望むことができる。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

望湖台(金沢市末広町)

卯辰山公園内にある標高141mの望湖台からは、桜越しに金沢の中心部のまちなみや日本海を一望できる。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

眺望の丘(金沢市末広町)

2019年3月に整備された卯辰山公園内にある眺めの良い広場。北陸新幹線と桜を一緒に撮影でき、日本海も一望。初夏には3,000株のアジサイが咲き乱れ、これも見逃せない。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

奥卯辰山健民公園(金沢市若松町エ85)

卯辰山の南東にある奥卯辰山健民公園は、ゴルフ場の跡地を整備したもの。広大な芝生広場やデイキャンプ場、木の香りがする交流館、大型複合遊具があるわんぱく広場、ベルギー庭園などがある。
有料でバーベキューやパークゴルフも楽しめ、アウトドアを楽しむ市民でいつも賑わう。「さくら広場」は、若木が多いようで、桜の木は全体的に小ぶりだが、一面に広がる桜は壮観。伸びやかな丘に並ぶ桜並木は、とても絵になる。広いので密になりにくく、のんびりお花見が楽しめる。
大池では人気者のコブハクチョウが、桜が咲く池畔を優雅に泳ぐ姿も見られる。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

大乗寺丘陵公園(金沢市長坂町・山科町)

お花見広場や主園路沿いに、ソメイヨシノやヤマザクラが約160本植えられ、桜の花越しに金沢市街地や日本海を望むことができる。ワシントンから里帰りした高峰譲吉博士ゆかりの桜も。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

金沢市営陸上競技場(金沢市弥生3-5-1)

金沢市民でも知らない人が多い穴場のお花見名所。約110本の桜が競技場を囲むように咲き誇り、開花に合わせて競技場内を無料で開放する。芝生のスタンドがあり、アルコール類の持ち込みは不可だが、飲食は可能。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

高尾城址見晴らし台(金沢市高尾町)

石川県教員総合研修センター近くにある高尾城址。丘一面に桜が植えられて、その様子は麓からもよく見える。駐車場から300段ほどの階段を登れば、「高尾城址見晴らし台」に到着。桜越しに金沢市街や日本海まで一望できる大パノラマは壮観だ。夜景スポットとしても知られているが、夜、ここを登るのはなかなか勇気がいりそうだ。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

石川県庁(金沢市鞍月1-1)

石川県庁舎前の駐車場には八重桜の並木があり、楊貴妃や関山、普賢象などが競うように咲き誇っている。八重桜の見頃はソメイヨシノよりも1〜2週間後。

例年の見頃(八重桜):4月中旬

末浄水場(金沢市末町1-1)

国指定名勝の園地や登録有形文化財の建屋などがあり、モダンでレトロな浄水場。前庭までは予約不要で見学可能(水道施設の見学は完全予約制)。コロナ禍前は桜の開花に合わせて、場内の公開も行っていたが、今年は不明。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

松月寺のサクラ(金沢市寺町5-5-22)

重要伝統的建造物群保存地区にも選定された金沢市寺町の松月寺にあり、境内から寺町通りに覆いかぶさるように枝を広げた見事なショウゲツジザクラ。あまり知られていないが、北陸では唯一、国の天然記念物に指定されている大変貴重な桜で、推定樹齢は400年。大桜、御殿桜とも呼ばれる。ヤマザクラの系統とみられ、見ごろはソメイヨシノよりほんの少しだけ遅い

例年の見頃(ショウゲツジザクラ):4月上旬

倶利伽羅公園(河北郡津幡町字倶利伽羅)

富山県と石川県の県境をまたぎ、約6,000本の八重桜が植えられている。「昭和の花咲かじいさん」と呼ばれた高岡市の高木勝己氏が20年以上にわたって3,000本ほどの八重桜を植栽したのが始まり。
毎年、桜が見ごろを迎える4月下旬〜5月上旬には、「倶利迦羅さん 八重桜まつり」が開催され、名物の「念仏赤餅」が販売される。

例年の見頃(八重桜):4月下旬

石川県農林総合研究センター林業試験場樹木公園(白山市三宮町ホ1)

石川県民にはよく知られた県内屈指のお花見スポット。北陸でおそらく一番たくさんの種類の桜が見られる公園で、その種類は150とも。お花見ができる期間も非常に長く、3月中旬には早咲きのキンキマメザクラなどが咲き始め、4月に入るとソメイヨシノとヤマザクラが咲き乱れ、4月下旬にはピンポン球のような花のケンロクエンキクザクラや、薄緑の花が咲くギョイコウなど、珍しい桜に合える。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月中旬

蝶屋桜の名所(白山市西米光町)

50本ほどの河津桜があり、地域住民によって手入れがされている。一足早く春爛漫の気分を味わえ、夜間ライトアップも行う。

例年の見頃(カワヅザクラ):3月中旬

手取峡谷(白山市吉野)

手取川が刻んだ峡谷沿いに桜並木がある。世界ジオパークに認定された白山手取川ジオパークを代表する峡谷。

例年の見頃:4月中旬

根上山(能美市根上町)

「根上松」がある根上山は源平古戦場跡で能美市指定文化財。山の頂上には白山遥拝所跡もある。ここには7種類約150本の桜が植えられ、早咲きの「大漁桜」が一足早く桜シーズンの到来を伝える。
大漁桜は、静岡県熱海市で誕生した園芸種で、淡い紅色の花が桜鯛を想像させ、その漁の時期とも重なることからこの名前がついたそうだ。桜餅の葉っぱに使われることで知られるオオシマザクラの系統ということで、近づくと桜餅のような香りもほのかに漂う。
ここにはメジロやヒヨドリが蜜を求めてたくさんやってきていた。

例年の見頃(タイリョウザクラ):3月下旬

桜づつみ(能美郡川北町壱ツ屋)

手取川にかかる辰口橋のたもと、堤防上に約950メートル、ソメイヨシノ206本と枝垂れ桜3本の桜並木がある。堤防上の道は車で走ることができる。よく晴れた日は桜の木越しに白山連峰を望むこともできる。開花期間中はライトアップも。

例年の見頃(ソメイヨシノ):4月上旬

母恋千本桜(河北郡内灘町など)

「花見がしたい」という、金沢医大に入院していた余命いくばくもない母の願いを叶えたいと願い、その思いがたくさんの人の心を動かして、内灘町、金沢市、津幡町にまたがる1500本、4.5kmの桜並木ができあがった。※能登半島地震の影響で道路が通行止めの可能性あり。
例年の見頃:4月上旬

◉Coming soonの桜(近々撮影に行く候補)

・伏見川流域(金沢市)
・弥生さくら公園(金沢市) など

筆者が書いた「北陸の桜」の記事は他にもあります。

祝! 北陸新幹線敦賀開業 福井の桜名所 〜人気スポットから穴場まで、2024年のお花見〜

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【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑 2021年に一気にめぐってきた編

ここに掲載した写真は全て著者が撮影しました(無許可転載を禁じます)

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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【ライターの仕事】ミツカン水の文化センター機関誌『水の文化』第76号で福井のそばを執筆

『水の文化』は、水をテーマにした社会貢献活動を行っているミツカンの機関誌で、毎号さまざまな切り口から水の大切さを伝えてくれます。

76号では「そばと水」を特集しており、その中で、福井県のそばがなぜおいしいのかを余すところなく紹介しました。

水の良さ、そばの栽培に適した環境はもちろんですが、それだけではないんですよね。歴史、文化、そして継承されてきた技、地域のやる気等々、さまざまな要素が相まって、今では「日本一おいしい!」そばの産地として不動の地位を築いています。

特集記事はWEBで公開されておりますので、ぜひお読みください。
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no76/04.html

この特集とは関係ありませんが、せっかくなのでおすすめの福井のそば店の情報も。

私自身、そんなにたくさんの店を食べ歩いたわけではなく、「失敗した!」という店に入ったこともほとんどありません。そんな中でも、ここのおろしそばは特においしかったという、とっておきの3店を紹介しましょう。

1軒目は、越前市にある「そば蔵 谷川」です。

丸岡在来のそばを石臼で自家製粉し、機械挽きだけでなく、手回し石臼挽きの粉を使ったものもあり、メニューはそば粉と井戸水だけを使った十割そばのみ。写真はおろしそば(手臼粗挽麺)で、噛めばそばの風味が口いっぱいに広がります。この味わいはこの店だけでしか出合えない気がします。だいこんは3種類をブレンドし、注文を聞いてから大根をおろし、鰹節を削るという気遣いも素敵。

2軒目は、越前市にある「御清水庵」です。

武生駅からすぐのところにある店。食器洗い以外はすべて隣に湧き出ている清水(湧水)を使用。勝山、大野、福井市産のそば粉をブレンドして使い、喉越しがよく、風味があり、しかもコシが強い外一そば。大根は辛味大根と普通の大根をブレンドして、やや辛みが強いです。サービスのきな粉がたっぷりかかったきび団子も美味。

3軒目は、坂井市にある「たけのうち」です。

一見、普通の日用雑貨を売る家庭用品の店ですが、日用品が並ぶ店内の奥に、カウンターとテーブルがあります。実はこの店、おそば屋さんも兼業していて、丸岡産のそば粉を使い、コシもあって風味も良い二八の手打ちそばが食べられます。まずは小皿にのった岩塩をまぶしたそばを食して、そばの味を確かめます。大根おろしや薬味、削り節は、自分でのせて食べる方式。削り節の香りが食欲をそそります。三国神社のすぐそば。知る人ぞ知る隠れた名店だと思います。

ぜひ、北陸新幹線に乗って、絶品のおろしそばを食べにきてください。

ちなみに、『水の文化』76号では手取川も紹介されています。https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no76/15.html

写真と文若井 憲 Ken Wakai
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【フォトライターの仕事】旅の手帖2024年3月号で福井市の足羽川桜並木を紹介しました

『JR時刻表』の交通新聞社が発行する月刊『旅の手帖』。
その2024年3月号では「桜前線を追いかけて」を特集しています。
北陸では福井県福井市の足羽川桜並木を中心に、福井市内の桜を取り上げ、取材・撮影は私が担当しました。

延々と続く桜のトンネルが見事な足羽川桜並木

福井市は昭和20年代に空襲と震災、さらに水害という三重苦に見舞われました。そこから立ちあがろうと、足羽川の堤防にはたくさんの桜の苗木が植えられました。それが現在の桜並木のルーツです。
福井といえば「フェニックス」、つまり不死鳥がシンボルになっていますが、それは三度立ち上がった福井市民を象徴しているといえます。そして足羽桜並木の桜の成長とともに、福井の街は発展してきました。

そんな歴史があるから、この桜並木は福井市民にとっては特別な存在なのです。

桜とぼんぼり、そして水仙が競演

足羽川桜並木を次の世代に引き継ぐために世話を続ける「ふくい桜守の会」と、花の時期に合わせて、桜並木に中学生らが詠んだ独楽吟をあしらったぼんぼりを吊る活動をしている「足羽川ぼんぼり物語実行委員会」をメインに、足羽山の足羽神社のシダレザクラも取材しました。

ドーム状になり、美しい足羽神社のシダレザクラ

足羽山名物の木の芽でんがくとこんにゃくおでん、おいしかったです。
足羽山に花見に行ったら食べる定番だそうです。
(桜のシーズン以外にも食べられます)

足羽山の茶屋の名物「木の芽でんがく」(写真は中村屋)
これもまた名物の「こんにゃくおでん」。福井でしか食べられていない地がらしの辛味がクセになる(中村屋)
福井城もライトアップされる。こちらは訪れる人も少なく、穴場

昨シーズンに撮り下ろしていた未発表写真も惜しげもなくふんだんに使い、4ページというボリュームで福井の桜を掘り下げています。

福井市内のさくら通りも両側に桜並木が続く

現在、全国の書店で発売中です!

ぜひ、ご覧ください。

旅の手帖3月号
https://san-tatsu.jp/tabite/293649/

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金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第5回 唐崎松編】

兼六園を代表する松といえば、根上松とこの唐崎松でしょうね。

唐崎松は、樹齢約180年のクロマツで、13代藩主の斉泰が、琵琶湖を模して霞ヶ池を現在の大きさに拡張した際に、琵琶湖畔にある唐崎神社から種を取り寄せたもの。琵琶湖にこだわった藩主の想いがうかがいしれます。

水面に枝を伸ばした姿は鶴が羽ばたくように見えます

雪吊りが施された姿は、北陸の冬を象徴する景観と言っても過言ではないでしょう。

雪吊りされた松は離れたところから見ると一つに見えますが、実は唐崎松(左)と玩月松(がんげつのまつ)の2本の松からなっています。
風がない日は霞ヶ池に雪吊りが映って美しい

北陸地方特有の湿気を含んだ重たい雪から枝を守るために雪吊りが行われますが、その方法にはいくつかあり、この松は「りんご吊り」と呼ばれる方法で、最大高さ約14メートルの5本の芯柱を立て、約800本の藁縄で枝を吊ります。放射状に張られた藁縄がとても美しく、それを図案化したものが金沢のご当地ナンバープレートにもなっています。雪吊りする際、庭師はこの芯柱によじのぼり、先端から縄を投げるという、凄技を間近で眺めることもできます。

毎年11月1日から始まる雪吊り作業

ちなみに、なぜ「りんご吊り」かと言えば、りんごの木が実の重さで枝が折れないようにしたことが由来ですが、江戸時代の加賀藩はりんごの産地として有名で、長町武家屋敷や香林坊のあたりにはりんご畑が広がっていたとか。そこで行われていた「りんご吊り」が、庭木の雪吊りの呼び名にもなったのではないかという説があります。

過去に一度だけ行われた漆黒のライトアップ。ご覧の通り、真っ暗な唐崎松が見られた。でもあまり評判が良くなかったのか、以来このバージョンのライトアップは行われていない
冬の段では暖色系のライトアップが行われ、黄金色に輝く

晩秋や冬に、期間限定で夜間ライトアップが行われますが、暗闇に浮かび上がる雪吊りされた唐崎松の姿は、その美しさが際立ちます。毎年、11月1日からこの唐崎松を皮切りに雪吊りが始まり、1ヵ月半をかけて園内の約800カ所に施されます。一方、取り外しは3月15日頃から始まり、こちらはわずか1週間で完了します。雪吊りに使用された藁縄は、外された後は細かく裁断されて、堆肥として再利用されているそうで、循環型の取り組みがされています。

秋の段のライトアップは紅葉とのコラボが楽しめる
写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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【フォトライターの仕事】『旅の手帖』11月号の第2特集「刀剣の世界」で、五箇伝の一つ、岐阜県関市の日本刀を取材・執筆しました

正直言って、日本刀にはあまり関心がなかった私。いやむしろ、「日本刀って武器でしょ」と思って、刀の尖った先端を見るとゾクゾクしてきて(よくない方の意味です)、どちらかと言えば、避けていました。

それでも取材を進めていくうち、日本刀って武器であることには変わりありませんが、日本人にとっては、心の拠りどころとでも申しましょうか、言葉で表すのは難しいのですが、心の奥底と共鳴し合う何かがあるということを知り、しかも、そのアンテナが自分にも備わっていることに気がつきました。

関観光の拠点となる「せきてらす」の前には日本刀をモチーフにしたオブジェが

そうなるともう、一気に日本刀へ興味が溢れ出してきて、一振り欲しくなるのはもちろん(高くて買えない、汗)、全国各地にある名刀を展示している美術館や博物館をめぐってみたくなりました。新たな旅の目的を見事開花した次第です。

世界に名だたる刃物のまちらしいカミソリのオブジェ

一見マニアックなネタを、しっかり旅行の楽しみへと昇華させている『旅の手帖』はやっぱすごい。この特集、ファインプレーだと思います。

カラフルなラッピングが目を引く長良川鉄道

旅の新たなネタをお探し中の方、この特集は必見です!ちなみに、美濃では南北朝の頃から日本刀を大量生産すべくシステマチックな生産体制を構築していました。そのスピリッツは刃物のまち・関にしっかり受け継がれ、今では世界三大刃物のまちになりました。

石川県小松市の田園地帯に、ラピュタのような風景が

小松市の里山には、まさしくそんな風景が点在しているのをご存知でしょうか?

小松市滝ヶ原町は、江戸時代から現在も、緑色凝灰岩(グリーンタフ)の滝ヶ原石を産します。その石は、古くは小松城や金沢城の石垣の一部や、また福井地震で倒壊した丸岡城(国の重要文化財)の修復された石瓦も使われ、優れた石材として人気があります。

この滝ヶ原町ののどかな里山風景の中でひときわ目を引くのが、江戸時代から昭和の中頃まで、滝ヶ原石の最盛期を支えた「西山石切り場跡」。ジブリ映画の『ラピュタ』に出てきそうな佇まいですね。崩落の危険があるため、残念ながら近づくことはできませんが、遠くからも採掘の跡がよく見えます。

*名前をクリックするとグーグルMAPが開きます!

西山石切り場跡

また、滝ヶ原で石にまつわる一番の見どころが、「滝ヶ原アーチ型石橋群」めぐり。明治後期から昭和初期に建造されたアーチ型石橋が、町内に5つも残っています。

実は、日本のアーチ型石橋というのは9割以上が九州に集中しているそうで、本州ではこのような石橋群が存在することは大変珍しいのだとか。

5つのうち3つは、欄干が無く、ちょっとスリリング。また、西山橋と大門橋は車でも渡ることができます。下を流れる川の水の美しさにも目を奪われます。

*橋の名前をクリックするとグーグルMAPが開きます!(以下同じ)

東口橋/橋長9メートル、幅員2.5メートル

丸竹橋/橋長14.3メートル、幅員4.2メートル

西山橋/橋長12メートル、幅員3.9メートル

我山橋(がやまばし)/橋長10メートル、幅員2.7メートル

大門橋/橋長11.5メートル、幅員3.2メートル

のどかな里山の風を感じながら、ひっそりとたたずむアーチ型石橋群めぐり。
マニアックですが、なかなか楽しい、小松の穴場です。
ありきたりの観光地に飽きた方におすすめします。

写真と文若井 憲 Ken Wakai
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金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第3回 徽軫灯籠編】

「徽軫灯籠」と書いて、「ことじとうろう」って読みます。
兼六園と言えば、真っ先に思い浮かべるのがこの灯籠ではないでしょうか。

兼六園を代表する景観。奥に見える建物は内橋亭

「徽軫」は「琴柱」とほぼ同じ意味で、つまりこの灯籠の形が、琴の絃(いと)を支える琴柱に似ているからこの名前がついたそうです。でもなんで難しい漢字を使うのか? その理由は調べても分かりませんでした。

この灯籠、江戸時代の絵図を見ると、脚の長さは左右で同じでした。しかし、明治時代になんらかの理由によって片方の脚が折れ、その後、短い方の脚を石の上に載せてみたら、その絶妙なアンバランスさがむしろ美しく、兼六園のシンボルとなったんだとか。

冬、新雪が積もった朝はひときわ美しい
徽軫灯籠付近ではサギが獲物を探すことが多く、運が良ければこんなカットも
唐崎松越しに見るとこんな感じ。虹橋の上は言わずと知れた撮影スポット

なぜ脚が折れたのか? 通説では、誰でもが入れるようになったため、何者かが壊したとも。実はその時に限らず、この灯籠は今までに何度も倒されたり、壊されたりしたことがあって、現在の灯籠は2代目なのです。そんな波瀾万丈な過去を秘めているとは、知らない人も多いかもしれません。

4月上旬、桜と徽軫灯籠
雪の晴れ間に木々の葉から落ちる雪を入れて撮影
冬のライトアップ。雪吊りされた唐崎松とのコラボが美しい

ちなみに、徽軫灯籠の脇で、彩りを添えているイロハモミジは、2021年に枯れてしまい、2022年に後継の木に植え替えられました。元の木の樹齢は推定120年で、植え替えられた今の木の樹齢は10〜15年ほど。まだまだひよっこですが、少しずつこの風景に馴染み、風格も出てきました。

右の太い幹が先代のイロハモミジ
先代のイロハモミジの紅葉。兼六園の秋を象徴する景観
徽軫灯籠の後ろの若木が今のイロハモミジ
新緑のイロハモミジとツツジの花。イロハモミジもだいぶ風格が出てきた
写真と文若井 憲 Ken Wakai
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【フォトライターの仕事】『旅の手帖』7月号の特集で青春18きっぷを使った「北陸清流紀行」を紹介しました

『旅の手帖』(交通新聞社刊)がリニューアルされ、3号目となる7月号では、夏の恒例「青春18きっぷ」を大特集しています。

「青春18」と言っても、私のような青春を遠に過ぎたアラ還のオジサンでも問題なく使えます。この夏は、のんびりローカル線の旅を楽しみませんか?

ちなみに私は、「北陸清流紀行」6ページを担当しました。いつものようにライターとカメラマンをひとりで兼務するフォトライターで参加。
取材は敦賀から飛騨高山まで、越美北線や氷見線といった枝線のローカル線もあり、結構ハードでしたが、それでもしっかり楽しんできました。実はこういうハードな取材、嫌いじゃない。

北陸と飛騨の清流に関する話題は、ぜひ誌面をみていただければと思いますので、ここではそれ以外のこぼれ話をいくつか。

今回の旅のスタート、敦賀駅周辺は、来年の春の北陸新幹線開業を控えて、新しいものがたくさんできています。個人的には写真の「ちえなみき」という本屋さん。本好きにはたまらない店内は1日でもいられそう。

一乗谷朝倉氏遺跡は、歴史に詳しくないとなかなかその魅力を理解しにくかったんですが、新しくできた「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」と一緒に訪ねると、それが気持ちいいくらいによくわかるようになります。遺跡めぐりは博物館で電動アシストのレンタサイクルを借りるのがおすすめ。

大野市は町づくりの名手・金森長近がつくった城下町。町をぶらぶら歩くと、写真の謎のレンガ煙突がある建物など、いろいろ発見があって面白いです。越前大野駅などで散策マップを配布していますので、それを片手に歩いてみてください。

ふだんは乗客の少ない越美北線ですが、青春18きっぷのシーズンだけは、たくさんの乗客が。いつもこれだけの人が乗ってくれていれば、将来も安泰なんですけどね(写真は越前大野駅)。

こちらは、高岡駅から氷見駅へ向かう氷見線。景勝地・雨晴海岸付近では、海に近すぎで、車窓からはまるで遊覧船のような眺めが楽しめます(写真の島は女岩)。

雨晴駅近くにある「道の駅 雨晴」。まるで豪華客船を思わす白亜の建物が人気。人気すぎて、ハイシーズンは駐車場が満車となり、氷見線で来ることをすすめるほど。道の駅なのに・・・。

国宝「勝興寺」の最寄駅、伏木駅の郵便ポストにはこの方の小さな銅像が置かれています。
この方、どなたかわかりますか?
かつて、勝興寺のあった場所にあった国府に国司として赴任してきた大伴家持です。
万葉集を編纂した人として知られていますね。

一気に飛んで、岐阜県高山市の飛騨高山宮川朝市
飛騨高山の名物といえば、ラーメンと飛騨牛、五平餅、そしてこのみたらし団子。
みたらし団子って全国的には甘辛いタレがかけられていますが、高山のは甘くなく、香ばしい醤油の香りがたまりません。
でも、なんで甘くないのかな?と思ったら、「昔、都のみたらし団子を真似てつくったけど、高価な砂糖が使えず、醤油だけになったんじゃないかな」と朝市の方が仮説を披露してくださいました。

来年の春には敦賀駅〜金沢駅間はJRから第三セクター会社に移管されますので、青春18きっぷで夏の北陸を楽しむなら今年がチャンスです。
是非お出かけください。

それからもう一つ、巻頭の「ご当地いま推し!」では、大野市の半夏生さばも紹介しています。

書店で是非ご覧ください!

金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第2回 山崎山編】

「四季折々に美しいといわれる兼六園だけど、1番のおすすめ時期はいつ?」

実はこれ、よく訊かれる質問。

個人的には春夏秋冬、せめて1回ずつ訪ねて欲しいと、以下の記事に書きました。

【金沢観光】兼六園って、いつが一番おすすめ? 最低でも春夏秋冬、4回は訪ねて欲しい、季節によって全く表情が違う名園

でもまあ、旅行で訪れるとなるとそうもいかないのが現実ですね。

兼六園は、6つの兼ねることができない景観が同時に楽しめることからその名がついただけあって、いろいろな風景が楽しめますので、場所によっては、特にこの季節がおすすめ!というのがあります。

今回ピックアップする山崎山は、利用者の多い桂坂口や真弓坂口からですと、一番奥まった場所にあり、そのため、意外とここまで足を延ばさない人も多く、そもそもその存在自体を知らずに帰ってしまうということも。

個人的には、まるで深い山にいるような深閑とした山崎山の佇まいが特に好きなので、すごくもったいないなと思っていますし、ここに行くと、兼六園の印象もだいぶ変わるんじゃないでしょうか。

また、ちょっとうんちくめいたことを言わせてもらいますと、山崎山は金沢城を防衛するために造られた東外惣構の土塁跡といわれ、12代藩主の斉広が竹沢御殿を作った際、庭の築山に改修したものです。中腹にある「御室の塔」は京都の仁和寺の塔を模したもので、母親思いだった13代藩主の斉泰が、公家育ちの母・真龍院のために置いたそうです。

さて、おすすめの季節の話に戻しますと、山崎山はケヤキやカエデ、トチノキなどの落葉広葉樹が多く、別名で「紅葉山」ともいわれている通り、秋の紅葉が実に見事です。でも、春の新緑も生命の息吹を感じさせてくれるフレッシュさがあって、甲乙つけ難い魅力があります。山上には茅葺きのあずまやがありますので、春や秋に訪れたら、ゆったり時間をとってここでのんびりと美しい風景や木々を揺らす風に吹かれてみるのがおすすめです。

ちなみに、強い日差しを遮り、涼しさを感じられる夏も、モノトーンの世界となる冬も魅力的で、結局、春夏秋冬おすすめしたくなってしまいます(汗)。

山崎山の写真も四季折々、いっぱい撮っていますので、まずは写真で四季の変化をご覧ください。

(写真はクリックすると拡大できます《無断転載禁止》)

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写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
*取材・編集のご依頼はこちら

【column】ゴールデンウィークの近江町市場に思う

5月5日に発生した奥能登・珠洲市を震源とした最大震度6強の地震には驚きました。
被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。そして、1日も早く日常が戻りますように。

さて、今年のゴールデンウィークは金沢も久しぶりに旅行者で大いに賑わいました。
5月4日に近江町市場に寄ってみましたが、ご覧の通りの人出で、思うように前に進めないような状況でした。ほとんどの飲食店には行列ができ、なかでも人気の店は目を疑うような大行列ができていました。
一金沢市民として、これだけたくさんの人が訪れてくれることは、大変光栄であり、喜ばしいことですが、一方で「このままでいいのか?」という複雑な思いもあります。

近江町市場では、飲食店や旅行者向けにその場で食べられるようなものを提供している店は大いに賑わっていましたが、地元の買い物客向けの青果店などは、ほとんどの客が素通りしていました。
もともと「金沢の台所」とも呼ぶこの市場は、「市民あってのもの」。そうやって市民が買い物に来る市場だからこそ、風情があって、旅行者にとっても旅情を味わえる存在となっています。

ゴールデンウィークの人出を見たら、普段買い物に来ている市民の中には、恐れをなして近づくのをやめた人も多いのではないでしょうか。もしかしたら、地元客向けの店の中には、むしろ普段よりも売り上げを落としているかもしれません。
京都では観光客が増えすぎて、市バスに地元の人が乗れなくなって困っているという話を聞きましたが、近江町市場で買い物ができない地元客にとっては、それに同じ状況と言えるかもしれません。

近江町市場は、北陸新幹線が金沢駅まで開業した年に、想定をはるかに超える旅行者が押し寄せて、大混乱となり、地元客離れが問題となりました。その後、「やはり地元客あっての近江町市場」ということを確認・遂行して、地元の買い物客も戻ってきていると聞きます。そんな中での今回の状況を見ると、やはり少し心配にもなってきます。

SDGs未来都市でもある金沢市は今、「金沢SDGsツーリズム」を推進しています。
これは、旅行者と住民が一緒になって、持続可能な金沢観光にしていこうというもの。
これからは、旅行者や観光事業者には「責任ある観光」とも言われるレスポンシブル・ツーリズムの考え方が求められるようになるでしょう。これは、金沢に限ったことではなく、京都や鎌倉などその土地ならでは魅力がある人気観光地はそのような流れになってくることと考えられます。

私はせっかくきてくださった方に対して公害呼ばわりするのは失礼甚だしいと思うので、「観光公害」という言葉は嫌いですが、別の言い方、つまり「オーバーツーリズム」をなんとかしない限り、持続可能な観光にはならないなと、近江町市場の人混みの中で痛感しました。
そして、魅力ある近江町市場を存続させるために、例えば私ができることは、まずは近江町市場以外の金沢の魅力的なスポットをどんどん紹介していくことかななんて思っています。

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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