【ライターの仕事】ミツカン水の文化センター機関誌『水の文化』第76号で福井のそばを執筆

『水の文化』は、水をテーマにした社会貢献活動を行っているミツカンの機関誌で、毎号さまざまな切り口から水の大切さを伝えてくれます。

76号では「そばと水」を特集しており、その中で、福井県のそばがなぜおいしいのかを余すところなく紹介しました。

水の良さ、そばの栽培に適した環境はもちろんですが、それだけではないんですよね。歴史、文化、そして継承されてきた技、地域のやる気等々、さまざまな要素が相まって、今では「日本一おいしい!」そばの産地として不動の地位を築いています。

特集記事はWEBで公開されておりますので、ぜひお読みください。
https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no76/04.html

この特集とは関係ありませんが、せっかくなのでおすすめの福井のそば店の情報も。

私自身、そんなにたくさんの店を食べ歩いたわけではなく、「失敗した!」という店に入ったこともほとんどありません。そんな中でも、ここのおろしそばは特においしかったという、とっておきの3店を紹介しましょう。

1軒目は、越前市にある「そば蔵 谷川」です。

丸岡在来のそばを石臼で自家製粉し、機械挽きだけでなく、手回し石臼挽きの粉を使ったものもあり、メニューはそば粉と井戸水だけを使った十割そばのみ。写真はおろしそば(手臼粗挽麺)で、噛めばそばの風味が口いっぱいに広がります。この味わいはこの店だけでしか出合えない気がします。だいこんは3種類をブレンドし、注文を聞いてから大根をおろし、鰹節を削るという気遣いも素敵。

2軒目は、越前市にある「御清水庵」です。

武生駅からすぐのところにある店。食器洗い以外はすべて隣に湧き出ている清水(湧水)を使用。勝山、大野、福井市産のそば粉をブレンドして使い、喉越しがよく、風味があり、しかもコシが強い外一そば。大根は辛味大根と普通の大根をブレンドして、やや辛みが強いです。サービスのきな粉がたっぷりかかったきび団子も美味。

3軒目は、坂井市にある「たけのうち」です。

一見、普通の日用雑貨を売る家庭用品の店ですが、日用品が並ぶ店内の奥に、カウンターとテーブルがあります。実はこの店、おそば屋さんも兼業していて、丸岡産のそば粉を使い、コシもあって風味も良い二八の手打ちそばが食べられます。まずは小皿にのった岩塩をまぶしたそばを食して、そばの味を確かめます。大根おろしや薬味、削り節は、自分でのせて食べる方式。削り節の香りが食欲をそそります。三国神社のすぐそば。知る人ぞ知る隠れた名店だと思います。

ぜひ、北陸新幹線に乗って、絶品のおろしそばを食べにきてください。

ちなみに、『水の文化』76号では手取川も紹介されています。https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no76/15.html

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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北陸の出汁事情

和食の基本中の基本と言えば、「出汁(ダシ)」。

出汁の良し悪しが、料理の出来を左右することはもちろんで、またその出汁を何でとるかによって料理の味も変わります。

北陸で出汁と言えば、「昆布」を想像されるでしょう。北前船によって北海道の昆布が各寄港地にもたらされて広まり、これは「昆布ロード」とも称され、遠くは薩摩から琉球、さらには中国へも運ばれていきました。

さて、一口に昆布と言っても、「利尻」「日高」「羅臼」・・・と、いろいろな種類があり、富山県を中心に、北陸では料理によってこの昆布を使い分けるという文化も定着しています。

ところが、北陸でポピュラーな出汁は昆布だけではないのです。

氷見の煮干し、能登を中心としたアゴ(トビウオ)、能登の魚醤・いしる(いしり)、福井の鮎(焼きがらし)をはじめ、豊富に採れる海藻や魚介、キノコなども出汁として使われています。

また、富山の郷土料理で知られる「たら汁」(トップの写真)は、スケトウダラの肝や骨、白子や真子などから出る出汁のみで、それが最高の味わいをつくっています。

ちなみに、江戸時代、加賀藩前田家では最上級の出汁として「白鳥」や「鶴」も用いていたそうですが、これはもちろん現代ではご法度!

北陸の出汁というと、昆布のイメージが強いですが、かつお節もそば汁には欠かすことができず、福井にはおろしそば専用のかつお節を販売している専門店も。

これだけ多彩な出汁があることは、北陸の食文化が豊かであることの証と言えるでしょう。

これらの出汁を使い、これまた北陸の各地にある個性豊かな味噌と具材、名水と呼ばれる湧き水を使って、それぞれの創作味噌汁を作って、その土地に関係する伝統工芸の器に盛り付けて食べくらべる――そんな贅沢をしてみたいなと思っています。

写真のラーメンは、ミシュランガイドにビブグルマンで掲載され、行列の絶えない氷見市の貪瞋癡(とんじんち)の「氷見産煮干しラーメン」。まずは最初に体に染み渡る氷見の煮干しのうまさを味わえるスープを一口。ちなみに氷見では煮干し出汁の「氷見カレー」も人気。

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。季節感ある写真のストックも豊富にある。
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