「徽軫灯籠」と書いて、「ことじとうろう」って読みます。
兼六園と言えば、真っ先に思い浮かべるのがこの灯籠ではないでしょうか。
「徽軫」は「琴柱」とほぼ同じ意味で、つまりこの灯籠の形が、琴の絃(いと)を支える琴柱に似ているからこの名前がついたそうです。でもなんで難しい漢字を使うのか? その理由は調べても分かりませんでした。
この灯籠、江戸時代の絵図を見ると、脚の長さは左右で同じでした。しかし、明治時代になんらかの理由によって片方の脚が折れ、その後、短い方の脚を石の上に載せてみたら、その絶妙なアンバランスさがむしろ美しく、兼六園のシンボルとなったんだとか。
なぜ脚が折れたのか? 通説では、誰でもが入れるようになったため、何者かが壊したとも。実はその時に限らず、この灯籠は今までに何度も倒されたり、壊されたりしたことがあって、現在の灯籠は2代目なのです。そんな波瀾万丈な過去を秘めているとは、知らない人も多いかもしれません。
ちなみに、徽軫灯籠の脇で、彩りを添えているイロハモミジは、2021年に枯れてしまい、2022年に後継の木に植え替えられました。元の木の樹齢は推定120年で、植え替えられた今の木の樹齢は10〜15年ほど。まだまだひよっこですが、少しずつこの風景に馴染み、風格も出てきました。
写真と文/若井 憲 Ken Wakai フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み *取材・編集のご依頼はこちら