日本海をバックに咲くオニユリ

石川県白山市の松任C.C.Zから金沢方面へと向かう「しおさいロード」。その途中、白山市八田町の保安林内にはオニユリの群生地があります。一時は絶滅の危機にあったそうですが、地元の方々の手入れによって、毎年1万5000本もの花が咲くまでになったとか。

例年7月下旬から8月上旬が見ごろですが、今年は少し早いのか、7月22日に訪れたら、すでにしおれかけている花もチラホラ。それでまだつぼみも多く、もうしばらくは花が楽しめそうです。

実は、ここ、今までに3回訪れていますが、今回、一番花がたくさん咲いていました。特に海岸に面した砂丘地の斜面が多く咲いていますので、海岸から眺めるのがおすすめ。ちなみに、砂浜に降りたら暑いかなと思いきや、海風が心地よく、保安林の中よりもむしろ涼しく感じました。

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金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第3回 徽軫灯籠編】

「徽軫灯籠」と書いて、「ことじとうろう」って読みます。
兼六園と言えば、真っ先に思い浮かべるのがこの灯籠ではないでしょうか。

兼六園を代表する景観。奥に見える建物は内橋亭

「徽軫」は「琴柱」とほぼ同じ意味で、つまりこの灯籠の形が、琴の絃(いと)を支える琴柱に似ているからこの名前がついたそうです。でもなんで難しい漢字を使うのか? その理由は調べても分かりませんでした。

この灯籠、江戸時代の絵図を見ると、脚の長さは左右で同じでした。しかし、明治時代になんらかの理由によって片方の脚が折れ、その後、短い方の脚を石の上に載せてみたら、その絶妙なアンバランスさがむしろ美しく、兼六園のシンボルとなったんだとか。

冬、新雪が積もった朝はひときわ美しい
徽軫灯籠付近ではサギが獲物を探すことが多く、運が良ければこんなカットも
唐崎松越しに見るとこんな感じ。虹橋の上は言わずと知れた撮影スポット

なぜ脚が折れたのか? 通説では、誰でもが入れるようになったため、何者かが壊したとも。実はその時に限らず、この灯籠は今までに何度も倒されたり、壊されたりしたことがあって、現在の灯籠は2代目なのです。そんな波瀾万丈な過去を秘めているとは、知らない人も多いかもしれません。

4月上旬、桜と徽軫灯籠
雪の晴れ間に木々の葉から落ちる雪を入れて撮影
冬のライトアップ。雪吊りされた唐崎松とのコラボが美しい

ちなみに、徽軫灯籠の脇で、彩りを添えているイロハモミジは、2021年に枯れてしまい、2022年に後継の木に植え替えられました。元の木の樹齢は推定120年で、植え替えられた今の木の樹齢は10〜15年ほど。まだまだひよっこですが、少しずつこの風景に馴染み、風格も出てきました。

右の太い幹が先代のイロハモミジ
先代のイロハモミジの紅葉。兼六園の秋を象徴する景観
徽軫灯籠の後ろの若木が今のイロハモミジ
新緑のイロハモミジとツツジの花。イロハモミジもだいぶ風格が出てきた
写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第2回 山崎山編】

「四季折々に美しいといわれる兼六園だけど、1番のおすすめ時期はいつ?」

実はこれ、よく訊かれる質問。

個人的には春夏秋冬、せめて1回ずつ訪ねて欲しいと、以下の記事に書きました。

【金沢観光】兼六園って、いつが一番おすすめ? 最低でも春夏秋冬、4回は訪ねて欲しい、季節によって全く表情が違う名園

でもまあ、旅行で訪れるとなるとそうもいかないのが現実ですね。

兼六園は、6つの兼ねることができない景観が同時に楽しめることからその名がついただけあって、いろいろな風景が楽しめますので、場所によっては、特にこの季節がおすすめ!というのがあります。

今回ピックアップする山崎山は、利用者の多い桂坂口や真弓坂口からですと、一番奥まった場所にあり、そのため、意外とここまで足を延ばさない人も多く、そもそもその存在自体を知らずに帰ってしまうということも。

個人的には、まるで深い山にいるような深閑とした山崎山の佇まいが特に好きなので、すごくもったいないなと思っていますし、ここに行くと、兼六園の印象もだいぶ変わるんじゃないでしょうか。

また、ちょっとうんちくめいたことを言わせてもらいますと、山崎山は金沢城を防衛するために造られた東外惣構の土塁跡といわれ、12代藩主の斉広が竹沢御殿を作った際、庭の築山に改修したものです。中腹にある「御室の塔」は京都の仁和寺の塔を模したもので、母親思いだった13代藩主の斉泰が、公家育ちの母・真龍院のために置いたそうです。

さて、おすすめの季節の話に戻しますと、山崎山はケヤキやカエデ、トチノキなどの落葉広葉樹が多く、別名で「紅葉山」ともいわれている通り、秋の紅葉が実に見事です。でも、春の新緑も生命の息吹を感じさせてくれるフレッシュさがあって、甲乙つけ難い魅力があります。山上には茅葺きのあずまやがありますので、春や秋に訪れたら、ゆったり時間をとってここでのんびりと美しい風景や木々を揺らす風に吹かれてみるのがおすすめです。

ちなみに、強い日差しを遮り、涼しさを感じられる夏も、モノトーンの世界となる冬も魅力的で、結局、春夏秋冬おすすめしたくなってしまいます(汗)。

山崎山の写真も四季折々、いっぱい撮っていますので、まずは写真で四季の変化をご覧ください。

(写真はクリックすると拡大できます《無断転載禁止》)

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写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーランスで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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金沢を代表する観光名所の兼六園をマニアックに攻めてみよう【第1回 噴水編】

北陸の城下町、石川県金沢を代表する観光スポットが兼六園。

加賀藩主の前田家が何代にもわたって作り上げた大名庭園で、庭園界の国宝に値する国の特別名勝に指定され、あのフランスの旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』では3星を獲得している、言わずと知れた日本を代表する名園なんです。

誰もが、金沢に行ったら一度は行ってみたいと思う観光名所ですが、とりあえず、1番の撮影スポットの徽軫灯籠(ことじとうろう)と一緒に記念写真を撮って、それで満足して帰ってしまう人が多いのではないでしょうか。これ、とってももったいないこと。

実は自他共に認める兼六園マニアの筆者は、「これを知ると兼六園に行きたくなる!」、そんなマニアックだけど面白い情報をお伝えしていきますね。

記念すべき第1回は「噴水」です。

見どころとして、存在はご存知の方も多いでしょうが、そのスゴさはあんまり知られていない様子。

先日も、この噴水の前で家族を連れたお父さん曰く、「この噴水は昔からあったものじゃなくて、最近作られてものじゃないの」と。

「いやいやお父さん、この噴水、実は江戸時代からあるもので、現存する日本最古の噴水って言われているんですよ」って、本当はただしたかったんですけど、いきなりそんなこと言ったら、「変な人」って思われるでしょうから、グッと我慢しました。

ちょっとうんちくめいたことを言わせてもらいますと、13代藩主・前田斉泰(なりやす)が金沢城二の丸に噴水を作るために、試作させたといわれているのがこの噴水で、日本庭園で噴水というのはとても珍しいものでした。その仕組みは、噴水の5メートル上にある霞ヶ池との高低差を利用していて、逆サイフォン構造(伏せ越し)により水を噴き出すもので、全く動力を使わない、自然エネルギー100%でサステイナブルなところも感心させられます。霞ヶ池の畔にはこの噴水の取水口も見ることができます。

ちなみに、この噴水の名前は? 単純に「噴水」のようですね。さすが日本最古。

この噴水にはなぜか惹かれる私。四季折々、いろいろな姿の噴水の写真を撮っているので、ぜひご覧ください。この噴水をこれだけ撮っている人ってなかなかいないだろうなーーって自負しています。フォトジェニックな兼六園の魅力を少しでも感じていただければ嬉しいです。

(写真は有償で貸し出しいたします。詳しくはお問い合わせください)

まれに、清掃などで霞ヶ池の水を抜くことがあり、その時はこの噴水の水も当然止まります。滅多にみられないそんなシーンも混ざっていますので、探してみてくださいね。

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写真と文若井 憲 Ken Wakai
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【富山・石川】北陸の桜名所図鑑 2022年に一気にめぐってきた編〜2023年の花見スポット探しに使える! 穴場スポット情報も〜

やっぱり桜好きにはたまらない北陸

「北陸の桜名所図鑑 2021年に一気にめぐってきた編」に引き続き、今年は富山県と石川県を中心に、今まで行ったことがなかった桜名所に重きを置いて、30カ所をめぐってきた。

福井市や金沢市、富山市といった街なかの桜(ソメイヨシノ)の見頃は4月上旬。だいたい東京や大阪などから1週間遅れという感じ(年によって結構違う)。北陸の場合、緯度の違いに標高の違いも加わり、桜前線が長く留まるのが特徴だ。3月下旬から5月上旬の1カ月ちょっとの間、北陸のどこかに行けばソメイヨシノの花を見ることができるのが大きな特徴だ。

北陸は自生する野生の桜の種類が多いのも特筆したい。早咲きのキンキマメザクラ、ソメイヨシノとほぼ同じくらいに咲くヤマザクラやオオヤマザクラ、エドヒガンなど、そして忘れた頃に咲くカスミザクラ、立山や白山で6月や7月に咲くタカネザクラなども。また、菊桜といわれる花びらが何百枚もある桜や固有の桜も多く、桜が好きな人にとっては話題に事欠かないエリアなのだ。

2022年にめぐった北陸の桜名所を時系列で一挙公開

2022年に回ってきた北陸の桜名所を一挙公開!
北陸の桜の見頃はいつ? おすすめのスポットは? 穴場の名所は? などなど、2023年以降の花見のご参考にもどうぞ!!

○2022/3/27 石川県林業試験場樹木公園【石川県白山市】

春遅い北陸各地からも河津桜が満開との便りが届いているころ、ここは標高が高いせいか、河津桜はまだ3〜4分咲き。花が少ない時期なのでハチがたくさん飛んでいた。ハチを撮りたかったけど、ハチにピントを合わすのは至難の業。

○2022/3/27 根上山【石川県能美市】

「根上松」がある根上山は源平古戦場跡で能美市指定文化財。山の頂上には白山遥拝所跡もある。ここには7種類約150本の桜が植えられ、早咲きの「大漁桜」が一足早く桜シーズンの到来を伝える。
大漁桜は、静岡県熱海市で誕生した園芸種で、淡い紅色の花が桜鯛を想像させ、その漁の時期とも重なることからこの名前がついたそうだ。桜餅の葉っぱに使われることで知られるオオシマザクラの系統ということで、近づくと桜餅のような香りもほのかに漂う。
ここにはメジロやヒヨドリが蜜を求めてたくさんやってきていた。

○2022/4/1 兼六園【石川県金沢市】

四季折々の美しさがある兼六でも、桜が満開の頃はやっぱり格別。日本さくら名所100選の一つで、ソメイヨシノはもちろん、桜に種類が多いことでも知られていて、石川県を代表する桜の名所。開花時期に行われる夜のライトアップも必見。訪れた時は満開にはまだ早く3分咲きくらいだった。

○2022/4/1 金沢城公園【石川県金沢市】

兼六園の向かい、石川門周辺や内堀沿いの桜並木がみごと。こちらも夜間ライタップが行われる。

○2022/4/5 朝日山公園【富山県氷見市】

約170本のソメイヨシノが咲く公園。展望台からは、桜の花越しに富山湾を一望できる。訪れた時はちょっと早すぎて1分咲き。2021年には「見晴らしの丘も」オープンしている。

○2022/4/5 富岩運河環水公園【富山県富山市】

都会的なオシャレな水辺空間に、スッと並んだ桜並木が映える。桜の下の芝生に座って見上げたり、この公園のシンボル・天門橋から見下ろしたりと、思い思いに桜を楽しむ人がたくさん。特に若い人に人気がある。訪れたには立山連峰もきれいに見えて、絶景だった。

○2022/4/5 富岩水上ライン【富山県富山市】

富岩運河環水公園を発着する富岩水上ラインの船上からは運河沿いに点在する桜の花を楽しむことができる。国指定重要文化財の中島閘門(船のエレベーター)を抜けたあたりと、運河を抜けた富山港のあたりの桜が見事なので、岩瀬行きの乗船がおすすめ。

○2022/4/5 岩瀬浜駅付近【富山県富山市】

岩瀬カナル会館前、富山地方鉄道富山港線の電車と桜のコラボが美しかった。知る人ぞ知る桜スポット。

○2022/4/5 富山駅前【富山県富山市】

北陸新幹線開業で新しくなった富山駅南口の広場には14本の桜の木が植えられている。このうち3本はワシントンDCのポトマック川河畔の「日米友好の桜」(高峰譲吉博士が関係している)を挿木で育てた「里帰り桜」だ。駅前商業施設MAROOTもオープンして人気のエリア。

○2022/4/5 松川公園【富山県富山市】

「松川ベリ」とも呼ばれる松川沿いの桜並木。夜は一部がライトアップされ、川面に映る桜が幻想的。路面電車を絡めて撮影するのも面白い。日中は桜のトンネルを進む遊覧船が名物。日本さくら名所100選。

○2022/4/5 富山城【富山県富山市】

城と石垣との対比や、堀の水面に反射する姿が美しい。夜はライトアップもされる。

○2022/4/6 稲荷公園【富山県富山市】

市の中心部からも近い広大な公園で、遊具施設が充実している。中央を流れる川沿いには桜の並木が続き、丘の上にある遊具施設に登れば、桜並木の上には立山連峰が望める。

さらに、この公園を挟むように、北陸新幹線とあいの風とやま鉄道、富山地方鉄道の3つの線路が走り、花見と一緒にいろいろな列車も見ることができる。

○2022/4/6 富山県中央植物園【富山県富山市】

日本海側初の総合植物園として平成5年に開園。90種類以上の桜を見ることができ、なかでも90本のソメイヨシノがつくる桜のトンネルは圧巻。桜並木の向こうには立山連峰のパノラマが広がる。「花のプロムナード」と名づけられたこの桜並木は、見頃にあわせて夜間ライトアップを実施。
※トップの写真も富山県中央植物園です。

○2022/4/6 神通川さくら堤(神通の千本桜)【富山県富山市】

神通川の中洲を囲むように、堤に800本の桜が4.8kmにわたって植えられている「神通川さくら堤」。残雪の山々を望む風光明媚な田園地帯に、神通川右岸の「塩の千本桜」と合わせ、1000本もの桜がつくる花の回廊は圧巻。
※神通の千本桜が正式名称とのご指摘をいただきました。連絡が取れず、詳しいお話が聞けていませんので、とりあえず、( )でご指摘の名称を入れています。

○2022/4/6 塩の千本桜(塩の桜堤)【富山県富山市】

神通川の右岸・塩の堤防に200本の桜が約1kmにわたって植えられている「塩の千本桜」。「神通川さくら堤」の800本の桜と合わせ、1000本の桜が続く。
※塩の桜堤が正式名称とのご指摘をいただきました。連絡が取れず、詳しいお話が聞けていませんので、とりあえず、( )でご指摘の名称を入れています。

○2022/4/6 高岡古城公園【富山県高岡市】

日本さくら名所100選にも選ばれた北陸を代表する桜の名所。園内には18種約1,800本の桜があり、中にはこの地方特有の品種の「コシノヒガンザクラ(越の彼岸桜)」もある。高岡城築城の翌年に、高岡城の馬場に砺波の山から移植されたとされ、さらに最近の研究では一般的なコシノヒガンザクラとは別の品種であることが分かり、「タカオカコシノヒガン」と命名された。小竹藪広場や本丸広場の桜が人気だが、本丸広場から外に出た池の端濠沿いの眺めも見事。

○2022/4/6 岸渡川桜並木【富山県高岡市】

岸渡川の両岸約1kmに約1000本のソメイヨシノが植えられ、見事な桜のトンネルを作る。夜間はライトアップも行う。

○2022/4/8 桜づつみ【石川県川北町】

手取川にかかる辰口橋のたもと、堤防上に約950メートル、ソメイヨシノ206本と枝垂れ桜3本の桜並木がある。堤防上の道は車で走ることができる。よく晴れた日は桜の木越しに白山連峰を望むこともできる。開花期間中はライトアップも。

○2022/4/8 木場潟公園【石川県小松市】

木場潟周りにある1周6.4kmの周遊園路には、約1700本の桜並木が続く。桜の花に時期には、木場潟の水面と桜、白山が織りなす絶景に出合える。

○2022/4/8 芦城公園【石川県小松市】

芦城公園は、第3代加賀藩主・前田利常の隠居城であった小松城の三の丸跡に作られ、池泉回遊式庭園となっている。
園内には約130本のソメイヨシノが植樹され、開花時期は花見客で大いに賑わう。夜はぼんぼりが点灯し、宴会もOKだが、2022年は中止だった。

○2022/4/9 浅野川大橋周辺【石川県金沢市】

女川の別名がある浅野川にかかる浅野川大橋(国登録有形文化財)から、上流の梅ノ橋の間には、両岸に桜並木が続く。夜は投光器によるライトアップはされないが、ぼんぼりに照らされた桜が妖艶で美しい。梅ノ橋のたもとでは菜の花と桜のコラボも楽しめる。

○2022/4/9 主計町茶屋街【石川県金沢市】

浅野川にかかる浅野川大橋(国登録有形文化財)と下流の中の橋の間、左岸にある主計町茶屋街の河畔には桜並木が続く。夜、投光器によるライトアップはされないが、ぼんぼりとガス燈に照らされ、茶屋街らしい妖艶で美しい夜桜を見ることができる。2022年に浅野川大橋寄りの桜の木が1本、根が腐って倒木の恐れがあることから伐採されてしまい、少し寂しくなってしまった。

○2022/4/11 母恋千本桜【石川県内灘町など】

「花見がしたい」という、金沢医大に入院していた余命いくばくもない母の願いを叶えたいと願い、その思いがたくさんの人の心を動かして、内灘町、金沢市、津幡町にまたがる1500本、4.5kmの桜並木ができあがった。

○2022/4/11 小丸山城址公園【石川県七尾市】

加賀藩祖の前田利家により築かれた小丸山城。江戸時代初期、一国一城令に従い廃城となった。その後、大正時代に公園として整備される。小高い丘にあり、七尾湾や七尾の町を一望できる。ソメイヨシノをはじめ、八重桜やしだれ桜など、約250本の桜があり、春は桜の名所として賑わう。

○2022/4/11 のと鉄道笠師保駅【石川県七尾市】

能登半島を走る第三セクター鉄道ののと鉄道といえば、能登鹿島駅の桜が有名だが、実は他の駅にも桜の木が植えられていて、列車に乗りながら花見が楽しめる。笠師保駅もそんなひとつ。他にも田鶴浜駅や能登中島駅、西岸駅などが見事だ。
ちなみに、笠師保駅には「恋火駅」という愛称があり、これは「塩津かがり火祭り」というキリコ祭りが由来。「海側の神」と「山側の神」が海の上で逢瀬を遂げるというロマンチックなストーリーの祭りだ。

○2022/4/11 のと鉄道能登鹿島駅【石川県穴水町】

能登半島のさくらの名所としても人気があるのと鉄道能登鹿島駅。「能登さくら駅」の愛称もある。NHKのドキュメンタリー番組で紹介されて、ますます人気となって、平日でも大賑わい。ホームに沿って約100本の桜が植えられ、その6・7割が樹齢90年を超え、一説では60歳が寿命ともいわれるソメイヨシノにしてはかなりの老樹。ただ、駅周辺の住民が会員の「能登鹿島駅さくら保存会」の手厚い保護により、いずれの木も元気そのもの。特に海側の上りホームの桜は枝ぶりがよく、枝越しに広がる七尾湾には感動する。駅の裏の斜面には枝垂れ桜も植えられ、その上の高台には展望台もでき、ここは桜のテーマパーク様相。老いも若きも、のどかな花見を楽しめる希少なスポット。夜はライトアップも行う。
※2023年3月10日発売の『旅の手帖』4月号では、能登鹿島駅を中心としたのと鉄道の旅を4ページで紹介しました。

○2022/4/11 のと鉄道西岸駅付近【石川県七尾市】

のと鉄道能登鹿島駅の隣が西岸駅。テレビアニメ『花咲くいろは』に登場する「湯乃鷺駅」のモデルとなった駅で、駅の東側には海が、西側には緩やかな棚田が広がっている。駅周辺には桜並木もあり、能登鹿島駅ほどではないが、ここも桜と鉄道、そして菜の花が一緒に撮れるスポットとして密かに人気。

○2022/4/12 松月寺のサクラ【石川県金沢市】

重要伝統的建造物群保存地区にも選定された金沢市寺町の松月寺にあり、境内から寺町通りに覆いかぶさるように枝を広げた見事なショウゲツジザクラ。あまり知られていないが、北陸では唯一、国の天然記念物に指定されている大変貴重な桜で、推定樹齢は400年。大桜、御殿桜とも呼ばれる。ヤマザクラの系統とみられ、見ごろはソメイヨシノよりほんの少しだけ遅い感じ。

○2022/4/12 高尾城址見晴らし台【石川県金沢市】

石川県教員総合研修センター近くにある高尾城址。丘一面に桜が植えられて、その様子は麓からもよく見える。駐車場から300段ほどの階段を登れば、「高尾城址見晴らし台」に到着。桜越しに金沢市街や日本海まで一望できる大パノラマは壮観だ。夜景スポットとしても知られているが、夜、ここまで登ってくるのはなかなか大変そうだ。
今年は見頃を過ぎてしまっていたので、来シーズン以降に再訪したいっていうか、通っちゃいそう。

○2022/6/17 立山黒部アルペンルート・黒部平【富山県】

北陸の桜を撮り歩いている私にとって、ずっと念願だったタカネザクラを、今年ようやく撮影することができた。この桜、中部山岳国立公園の標高の高いところでは7月でも花が見られ、実は桜前線を締めくくる桜とも言われることもある。写真は標高1,828メートルの黒部平付近で撮影。立山連峰と後立山連峰が聳えるスゴイ山の中だが、ロープウェイの駅から歩いて数分で辿り着ける。

筆者が書いた「北陸の桜」の記事は他にもあります。

祝! 北陸新幹線敦賀開業 福井の桜名所 〜人気スポットから穴場まで、2024年のお花見〜

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【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑・完結編! ベスト10+おすすめ48選 地元の桜ツウが教える北陸の桜名所・全58カ所!

【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑 2021年に一気にめぐってきた編

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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至福の一杯を求めて 日本全国みそ汁紀行【第1回】

和食の根本となるものの一つがみそ汁。最高のみそ汁は、水、出汁、味噌、そして具材と、全て厳選された材料を使い、手間ひまを惜しまず、卓越した技術から生まれる。
全国各地には、具材はもちろん、水も出汁も味噌も、その土地ならではのものから作られる個性豊かなみそ汁ががたくさんある。その最高の一杯を求めて、まずは地元・北陸から津々浦々を訪ね歩く旅に出ることにする。

※みそ汁とは水と出汁、味噌、具材によって生み出されるものを言い、麺類や鍋物なども含む。

 映えある第1回に登場するのは、「たら汁」(郷土料理/富山県朝日町)だ。体の芯まで冷えた漁師に食べさせるために、浜でこれを作り、帰りを待ったと伝わるもので、近くにある鉱泉宿の湯治客にふるまったところ、評判となり、この地方の名物として定着した。

 さて、富山湾ではマダラとスケトウダラの2種類のタラが獲れる。富山湾の一番東端にあるここではかつて、船が沈みそうになるほどたくさんのスケトウダラが獲れたそうだ。これをぶつ切りにしてアラや頭、肝までも入れ、味噌で煮込む。アラや頭のゼラチンがたまらない。
 魚から最高の出汁が出るため、他に出汁は入れず、タラ以外にはネギと、好みでささがきゴボウや豆腐、大根など入れる、極めてシンプルな料理。それだけに、食材の持ち味がものをいう。
 主役となるスケトウダラは富山湾での水揚げが激減しているそうで、なかなか地元産のものが手に入りにくくなってきた。獲れたての鮮度のいいタラをふんだんに使い、富山の名水と昔ながらに手作りされている天然醸造味噌で煮込み、仕上げに長ネギを散らして完成。

 ツウ好みの越中焼の丼に盛りつけ、ヒスイ海岸の別名がある宮崎・越中海岸で拾った宝石のようにきれいな石を加工した箸置きには林業が盛んな朝日町の杉で作った箸を置き、町内の蛭谷で漉かれた和紙をランチョンマット代わりに添えて。至福のたら汁を食すことにしよう。

イラストと文若井 憲 Ken Wakai
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【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑 ベスト10+おすすめ83選

筆者が今まで撮りためてきた北陸三県(富山・石川・福井)の桜名所の写真を一堂に集めました(全93カ所)。

北陸の桜名所ってどこ? 例年の見頃はいつ? そもそも北陸の桜ってどんな感じ? などなど、北陸の桜について写真中心に紹介。2024年の花見の参考にしていただけたら嬉しいです(今後追加や更新もしていく予定/最終更新日:2024年3月24日)。

※見頃は年によって1週間ほど前後します。最近は早まることが多く、最新情報をご確認ください。

【おすすめ】マークは筆者の個人的な推しスポット
【穴場】マークはあまり知られていませんが、超おすすめスポット

見逃せない北陸の桜名所ベスト10

 北陸の多くの桜名所を訪ね歩いた筆者が独断と偏見でベスト10を挙げるとしたら、次の10カ所かなと思います(順不同)。

松川公園(富山県富山市)/4月上旬

富山市の中心部を流れる松川沿いには、松川公園をはじめ、磯部堤、城址公園といった桜の名所が続く。松川公園と磯部堤には、約500本のソメイヨシノの並木があり、延べでその距離は約4kmにもなる。圧巻は空を埋め尽くすように枝を伸ばして咲く、松川遊覧船から桜のトンネルの眺め。夜はライトアップされ、水面に桜が映り、幻想的なムード。日本さくら名所100選

あさひ舟川「春の四重奏」(富山県朝日町)/4月上旬

舟川の両岸に植えられた約280本のソメイヨシノと、チューリップ、菜の花、そして残雪の北アルプスという、春の風物が4つ揃った風景が楽しめることで人気。チューリップは球根栽培の畑で、かつては30軒ほどのチューリップ農家がいたが、今は1軒のみ。菜の花は菜種油の採取用。桜、チューリップ、菜の花と3つの花がタイミングよく揃ってくれなかったり、曇って山が見えなかったりと、4つが揃って見えるのはなかなか難しいが、2〜3つ揃うだけでも十分に春爛漫のムードが楽しめる

高岡古城公園(富山県高岡市)/4月上旬

「さくら名所100選」にも選ばれた北陸を代表する桜の名所。園内には18種約1,800本の桜があり、中にはこの地方特有の品種の「コシノヒガンザクラ(越の彼岸桜)」がある。高岡城築城の翌年に、高岡城の馬場に砺波の山から移植されたといわれて、最近の研究では一般的なコシノヒガンザクラとは別の品種であることが分かり、「タカオカコシノヒガン」と命名された。国内にある野生種の桜の半分以上が存在する北陸は、実は「未知の桜」の宝庫でもあり、新しい品種の桜がしばしば発見され、大きなニュースになる

小矢部川河川公園(富山県南砺市)/4月中旬

小矢部川の河川敷のふくみつ千本桜のライトアップを初めて見たのは、もう10年以上前。そのライトアップの方法に衝撃を受けた。ライトアップといえば、投光器やLEDライトを散りばめたものが主流だが、ここでは昭和の工事現場で見かけた、網のカバーがついた裸電球を桜の枝に渡してある。一見無造作だが、対岸から見ると、枝にたわわに実った裸電球がメルヘンチックでもあり、とってもいい雰囲気。ただ、数年前に訪れたら、一部がLEDに置き換わっていましたので、電球のライトアップは今も続いているかどうか・・・

兼六園(石川県金沢市)/4月上旬

四季折々の美しさがある兼六園だが、桜が満開の頃はやっぱり格別。ソメイヨシノはもちろん、桜に種類が多いことでも知られる。開花時期に行うライトアップも必見。日本さくら名所100選

石川県農林総合研究センター林業試験場樹木公園(石川県白山市)/4月中旬

石川県民にはよく知られた県内屈指のお花見スポット。北陸でおそらく一番たくさんの種類の桜が見られる公園で、その種類は150とも言われる。お花見ができる期間も非常に長く、3月中旬には早咲きのキンキマメザクラなどが咲き始め、4月に入るとソメイヨシノとヤマザクラが咲き乱れ、4月下旬にはピンポン球のような花のケンロクエンキクザクラや、薄緑の花が咲くギョイコウなど、珍しい桜に合える

能登鹿島駅(石川県穴水町)/4月中旬

昭和7年(1932)、国鉄・七尾線が能登中島駅から穴水駅まで開業した記念に、地元住民が桜を植樹したのが始まり。現在は駅周辺の住民によって世話されている。桜の木はソメイヨシノで100本ほどあるうち、6〜7割は開業当時に植樹されたもの。ソメイヨシノにしてはかなりの老樹であるが、いずれも状態は良好。また、土壌の関係か、海側の上りホームに沿って植えられた桜の方が樹勢が強い。
駅からは海や天気が良ければ立山連峰も望むことができ、春は大勢の花見客で賑わう。駐車場もあるが、土日は大渋滞となることも多く、鉄道で訪れることがおすすめだ。

足羽川 桜並木(福井県福井市)/4月上旬

約600本、全長約2.2kmの日本最大級の規模といわれるのが足羽川堤防の足羽川桜並木。言わずと知れた福井県で最もポピュラーなお花見スポットである。この堤防からもよく見える足羽山公園とあわせ、日本さくら名所100選にも選ばれている。見ごろにあわせて夜間ライトアップが実施され、とても幻想的だ

霞ヶ城公園(福井県坂井市)/4月上旬

小高い丘に建つ丸岡城は別名・霞ヶ城と呼ばれる。天守(国指定重要文化財)は、江戸時代以前に建てられた日本に12しか残っていない「現存天守」の1つ。天守の規模はあまり大きくないが、威風堂々とした佇まいは、訪れた人を魅了してやまない。この丘一帯は、霞ヶ城公園と呼ばれ、約400本のソメイヨシノが植えられている。夜はライトアップされて、天守を包むかのように咲き乱れる姿は圧巻。例年、ふもとには露店が並び、花見客で賑わう。日本さくら名所100選にも選定され、例年の見頃は4月上旬〜中旬

金崎宮(福井県敦賀市)/4月上旬

金崎宮では、桜の咲く時期に、願いを込めた桜の小枝を交換する神事「花換まつり」が行われる。もともと金崎宮へ桜見物に訪れた男女が「花換えましょう」と声をかけあい、桜の小枝を交換することで思いを伝えたのが始まりといわれる。敦賀市民になじみが深く、たくさんの参詣客が訪れる

 規模だけでなく、プラスアルファや個性的なものをチョイスしました。ただ、甲乙つけ難いところもたくさんあるし、実は評判は聞くものの、まだ実際に行ったことがない場所も入れていませんので、今後改訂していくかもしれません。

全て撮り下ろし! 北陸の桜名所おすすめ48選

 今まで回ってきた北陸の桜名所と名桜を一挙公開します! 2022年の花見のご参考になれば幸いです。

【福井県】

神子の山桜(三方上中郡若狭町)/3月下旬【おすすめ】

若狭湾の常神半島にあり、もともとは土地の境の目印に植えられた山桜が自然に広がって、斜面を彩るようになったもの。針葉樹の濃い緑と芽吹き始めた木々の浅黄色と混ざり合ってパッチワークのような風景がとても印象的

水月湖畔(三方上中郡若狭町)/4月上旬【穴場】

ラムサール条約に登録された三方五湖の中で一番大きい水月湖。海水と淡水が混ざる汽水湖で、湖底には7万年以上もの歳月の堆積物が年輪のように積み重なった「年縞」があり、奇跡の湖とも言われる。この年縞は、地質学的年代決定での世界標準になっている。水月湖の湖畔に沿って続く県道216号線には桜並木があり、桜の花と湖水とのコントラストが美しい。対岸の山肌は、自然に広がったヤマザクラだろうか、ピンクの水玉模様になっているのも印象的。菜の花と桜のコラボはよくあるが、ハマダイコンと桜というちょっと珍しいコラボも

粟野駅周辺(敦賀市)/4月上旬

JR小浜線のこの駅には、線路脇に数本の桜があり、桜と電車を一緒にカメラに収めることができる。また、駅前には本数は少ないが枝ぶりのいい大きな桜が小さな並木をつくっていて、桜の間からは集落を見下ろすことができる

味真野小学校 校庭の桜(越前市)/4月上旬【おすすめ】

校庭の桜と聞くと、校庭の隅っこに植えられた桜をイメージされると思うが、ここの桜はそんな概念を根底から気持ちいいくらいに覆してくれる。なんと、桜の木が校庭のど真ん中に植えられていて、この学校の児童は、桜の下で遊んだり、運動したりしている。桜の木は推定樹齢140年以上と言われるエドヒガン。エドヒガンは樹齢1,000年を超えるものもあるくらいなので、立派に見えてもまだ若木なのだとか。この桜はこれから先も何百年と子どもたちの成長を見守ってくれることだろう

花筐公園(越前市)/4月上旬【おすすめ】

世阿弥の謡曲「花筐」の舞台として知られる花筐公園(かきょうこうえん)。ここでは約1,000本の桜が咲き誇る。茅葺きの古民家と桜、桜の花越しに眺める町のいらかの波、桜の木の下に広がるカタクリの花など、里山で長閑なお花見気分が味わえる。公園内には福井県天然記念物の淡墨桜がある

吉野瀬川(越前市)/4月上旬【おすすめ】

吉野瀬川の太田橋から野上橋の間、両岸から枝を伸ばす見事な桜並木。桜の木の密集度が半端ない

越前陶芸村・陶芸公園(丹生郡越前町)/4月上旬〜中旬【おすすめ】

しだれ桜やソメイヨシノ、八重桜などが植わり、桜の遊歩道に囲まれた芝生の広場など、広い園内ではお花見ピクニックが楽しい。敷地内には桜の岡本太郎やイサム・ノグチなど、日本を代表する作家のアート作品が置かれ、花見とアート鑑賞が同時にできる。4月中旬には「越前陶芸村しだれ桜まつり」が開催され、全国のクラフト作家が出展する

陶の谷駅跡(丹生郡越前町)/4月上旬【穴場】

かつてここを走っていた福井鉄道鯖浦線の駅の跡。レールの一部とプラットフォーム、駅名標に往時の面影が漂う。長閑な田園風景を背景に枝ぶりの良い桜が花開く。すぐ近くの法華寺の枝垂れ桜とあわせて訪ねたい

法華寺 しだれ桜(丹生郡越前町)/4月上旬

樹齢約100年の立派な枝垂れ桜

西山公園(鯖江市)/4月上旬〜中旬【おすすめ】

西山公園といえば、初夏のツツジと園内にある動物園のレッサーパンダが有名。しかし、約1,000本という桜の木があり、園内が華やぐ。なかでもすり鉢状になったお祭り広場の立体的に桜の木が広がる様子は圧巻

足羽神社(福井市)/4月上旬【おすすめ】

足羽神社のしだれ桜は樹齢約380年という巨木で、形が整ったドーム型をしている。夜はライトアップされ、暗闇に妖艶な姿が浮かび上がり、幻想的。このしだれ桜をはじめ、足羽山公園は足羽川桜並木とともに、日本さくら名所100選の一つに選ばれている

福井城(福井県福井市)/4月上旬【おすすめ】

福井城は家康の次男・結城秀康が入城するために築かれた城で、その本丸と二の丸を設計したのは徳川家康だといわれている。笏谷石の石垣に淡いピンクの桜が映える桜の名所で、開花にあわせて夜はライトアップされ、お堀の水面に桜が映れば、神秘的な美しさ。足羽川桜並木に比べると、花見に訪れる人はやや少なく、静かに花見をするならこちらがおすすめ。福井駅からも近いので、列車の待ち時間とかにちょっと寄ってみるのもあり。

さくら通り(福井市)/4月上旬

福井市の中心部を東西に走るこの通りは、両側に桜並木が延々と続き、春は桜の花に包まれる。福井市立順化小学校近くの歩道橋からの眺め(写真)がおすすめ。ソメイヨシノの他、八重桜も植えられ、長い間、花見が楽しめる

保田駅(永平寺町)/4月上旬〜中旬【穴場】

えちぜん鉄道保田駅の勝山方面には線路脇に桜並木があり、桜と残雪の雪山、ローカル電車を一度にカメラに収めることができる

勝山弁天桜(福井県勝山市)/4月中旬【おすすめ】

一目千本とも呼ばれる奥越の桜名所。九頭竜川の右岸には約1.5km、450本のソメイヨシノが続く。川に掛けられたたくさんの鯉のぼりや、残雪の山々との共演はとても絵になる。この桜は「桜の名所にしよう」と、昭和初期に地域の世話役をしていた人が、私財を投じて桜の苗木を購入したり、自分の畑で苗木を育てたりして、現在のベースを作り、今は地元住民たちによって大切に守られている。
福井市の足羽川桜並木より数日遅れて見頃を迎える。

亀山公園(大野市)/4月中旬

天空の城としても有名な大野城がある山頂付近からは眺めがいい

九頭龍湖(福井県大野市)/4月下旬

大野市の山間部にある九頭竜湖。紅葉の名所として有名だが、その湖畔にはたくさんのソメイヨシノやヤマザクラ、ヤエザクラなどが植栽され、湖を背景に咲く花は楚々として美しく、桜の名所としても知られる。その1番の特徴はなんといっても、見ごろの時期。平地ではとっくに花が散って、「今年の桜シーズンも終わったな」なんて思っている頃に開花の便りが届く。例年の見頃は4月下旬〜5月上旬という遅さ。「花見気分をもう少し味わいたい!」と思っている人には、この上ない場所だ

竹田の里 しだれ桜(坂井市)/4月下旬【おすすめ】

坂井市の山間部にある竹田の里。あたり一帯には700本ものしだれ桜があり、なかでも「たけくらべ広場」は、100本ほどのしだれ桜が咲き競い、まるで桃源郷のよう。普段は静かな山里だが、桜の時期は多くの花見客で賑わう。見ごろに合わせて「竹田の里しだれ桜まつり」が開催され、なかでもその期間中に行われるライトアップはおすすめ。暗闇に浮かび上がる桜の花の帯は、妖艶なムードが漂い、思わず息をのむ美しさ

女形谷のサクラ(坂井市)/4月上旬

福井県指定天然記念物で、樹齢400年ともいわれる

あらた坂《山室の桜並木》(あわら市)/4月上旬

『ちはやふる』に登場する桜並木のモデルといわれる

※福井県で未訪問の主な桜名所/名田庄の桜並木(おおい町)妙祐寺のしだれ桜(小浜市)、小浜公園(小浜市)、明通寺(小浜市)、神宮寺(小浜市)味真野苑(越前市)、福井県護国神社(福井市)、一乗谷朝倉氏遺跡(福井市)、福井総合グリーンセンター(坂井市)矢ばなの里(大野市)など、鋭意追加予定!

【石川県】

加賀市勅使町の桜並木(加賀市)/4月上旬【穴場】

動橋川沿いに延々と続く桜並木。こんなすごい桜並木が石川県にあったなんて知らなかった。ネットにはあまり情報が出てないが、それでも結構人が来ていたので、地元の人しか知らない穴場みたい

旧大聖寺川(加賀市)/4月上旬【おすすめ】

ゆったりと流れる旧大聖寺川の川面に桜並木が映り、散り始めた花びらが彩りを添えて、風流。畔には大聖寺藩主の休憩所だった「長流亭」(国指定重要文化財)が建つ。以前は流し舟も運航されていたが、今は廃止された

熊坂川の桜並木(加賀市)/4月上旬

大聖寺川の支流・熊坂川沿いに延長約1kmに渡って約200本の桜並木がある。 開花中、夜間はぼんぼりが灯り、風情ある夜桜も楽しめる。旧大聖寺川の桜並木が隣接してあり、周辺を散歩しながら花見が楽しめる

芦城公園(小松市)/4月上旬【おすすめ】

芦城公園は、第3代加賀藩主・前田利常の隠居城であった小松城の三の丸跡に作られ、池泉回遊式庭園となっている。園内には約130本のソメイヨシノが植樹され、開花時期は花見客で大いに賑わう。夜はぼんぼりが点灯し、宴会もOK

う川古代桜(小松市)/4月上旬

旧白山電気鉄道遊泉寺駅に植えられたと思われる桜。菜の花とのコントラストが美しい

木場潟(小松市)/4月上旬【おすすめ】

晴れた日は白山を望む

梯川沿いの桜並木(小松市)/4月上旬【穴場】

SNSで見つけて、行ってみたら素晴らしかった。ネットにもあまり情報が出ていない穴場。
観光地ではないので、看板も駐車場もない。訪れた日は、風がなく、川面に桜が映って最高だった

根上山(能美市)/3月下旬

「根上松」がある根上山は源平古戦場跡で能美市指定文化財。山の頂上には白山遥拝所跡もある。ここには7種類約150本の桜が植えられ、早咲きの「大漁桜」が一足早く桜シーズンの到来を伝える。大漁桜は、静岡県熱海市で誕生した園芸種で、淡い紅色の花が桜鯛を想像させ、その漁の時期とも重なることからこの名前がついたそうだ。桜餅の葉っぱに使われることで知られるオオシマザクラの系統ということで、近づくと桜餅のような香りもほのかに漂う。訪れた時は、メジロやヒヨドリが蜜を求めてたくさんやってきていた

健康ロード(能美市)/4月上旬

旧北陸鉄道能美線の廃線跡で「健康ロード」と名付けられた自転車優先道路には、約10km、約2,000本ものソメイヨシノの並木が続く。延々と続く桜ロードをサイクリングするのは爽快で、特に散り際の花吹雪の中を走るのは最高だ

蝶屋桜の名所(白山市)/3月中旬

50本ほどのカワヅザクラがあり、地域住民によって手入れがされている。一足早く春爛漫の気分を味わえ、夜間ライトアップも行う

手取峡谷(白山市)/4月中旬

切り立った断崖絶壁が続く手取峡谷。冬枯れた景色の中、桜の花が春を告げる(黄門橋より上流を望む)

金沢城公園(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

金沢城公園の桜といえば、ライトアップされるとお堀の水面に桜が映ってとっても幻想的な内堀の桜並木が人気。また、国の重要文化財の石川門とのツーショットも定番。石川門を見上げる芝生広場は例年は花見客で一杯になるが、2020年には新型コロナの影響でガランとしていた。そのほか、兼六園の桜が一望できる丑寅櫓跡もおすすめ

浅野川(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

金沢には、浅野川と犀川という2つの大きな川が流れており、浅野川を女川、犀川を男川とも呼ぶ。そこはかとなくはんなりとした雰囲気が感じられる浅野川は、浅野川大橋の上流と下流に桜の並木が続く。主計町では、陽が落ちるとガス灯のあかりに桜の花が照らし出されて、いっそう幻想的なムード(写真)

犀川(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

男川の別名がある犀川。犀川大橋から上流の桜橋にかけては金沢出身の文豪・室生犀星が愛した散歩道で「犀星のみち」と呼ばれており、または両岸に見事な桜並木が続く。桜橋のすぐ近くにある桜坂の途中からは、犀川河畔の桜並木を見下ろすことができる。観光客の多い浅野川とは対照的に、犀川の方は近所の人たちが桜を眺めながら
ジョギングや散歩するなど、市民の憩いの場という色合いが濃い

慶恩寺しだれ桜(金沢市)/4月上旬【穴場】

小立野寺院群にある真宗大谷派の寺院。昭和18年(1943)に植えられたシダレザクラは樹高16m、幹回2.5m、枝巾12mで見事

二十人坂(金沢市)/4月上旬【穴場】

慶恩寺から歩いていけるここは知る人ぞ知る桜の名所。藩政時代、足軽二十人組が住んでいたことからこの名がついた

奥卯辰山健民公園(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

卯辰山の南東にある奥卯辰山健民公園は、ゴルフ場の跡地を整備したもの。広大な芝生広場やデイキャンプ場、木の香りがする交流館、大型複合遊具があるわんぱく広場、ベルギー庭園などがある。有料でバーベキューやパークゴルフも楽しめ、アウトドアを楽しむ市民でいつも賑わう。園内の一角には里山保全園地があり、棚田やとんぼ池など、里山環境の保全とともに、自然体験や学習の場としても活用されている。「さくら広場」は、若木が多いようで、桜の木は全体的に小ぶりだが、一面に広がる桜は壮観。伸びやかな丘に並ぶ桜並木は、とても絵になる。広いので密になりにくく、のんびりお花見が楽しめる

卯辰山四百年の森(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

前田利家の金沢入城400年を記念して昭和57年に作られた。約250本の桜が植栽され、谷一面が桜色に染まる

金沢市営陸上競技場(金沢市)/4月上旬【穴場】

金沢市民でも知らない人が多い穴場のお花見名所。約110本の桜が競技場を囲むように咲き誇り、開花に合わせて競技場内を無料で開放する。芝生のスタンドがあり、アルコール類の持ち込みは不可だが、飲食は可能

高尾城址見晴らし台(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

石川県教員総合研修センター近くにある高尾城址。丘一面に桜が植えられて、その様子は麓からもよく見える。駐車場から300段ほどの階段を登れば、「高尾城址見晴らし台」に到着。桜越しに金沢市街や日本海まで一望できる大パノラマは壮観だ。夜景スポットとしても知られているが、夜、ここまで登ってくるのはなかなか大変そうだ

大乗寺丘陵公園(金沢市)/4月上旬【おすすめ】

お花見広場や主園路沿いに、ソメイヨシノやヤマザクラが約160本植えられ、桜の花越しに金沢市街地や日本海を望むことができる。ワシントンから里帰りした高峰譲吉博士ゆかりの桜も

末浄水場(金沢市)/4月中旬

国指定名勝の園地や登録有形文化財の建屋などがあり、モダンでレトロな浄水場。前庭までは予約不要で見学可能(水道施設の見学は完全予約制)。コロナ禍前は桜の開花に合わせて、場内の公開も(2024年は不明。前庭のみ常時公開)

松月寺のサクラ(金沢市)/4月中旬

重要伝統的建造物群保存地区にも選定された金沢市寺町の松月寺にあり、境内から寺町通りに覆いかぶさるように枝を広げた見事なショウゲツジザクラ。あまり知られていないが、北陸では唯一、国の天然記念物に指定されている大変貴重な桜で、推定樹齢は400年。大桜、御殿桜とも呼ばれる。ヤマザクラの系統とみられ、見ごろはソメイヨシノとほぼ同じ(気持ち遅いかも)

母恋千本桜(内灘町など)/4月中旬【おすすめ】

「花見がしたい」という、金沢医大に入院していた余命いくばくもない母の願いを叶えたいと願い、その思いがたくさんの人の心を動かして、内灘町、金沢市、津幡町にまたがる1500本、4.5kmの桜並木ができあがった<地震の影響など、最新情報の確認を>

倶利伽羅公園(河北郡津幡町)/4月下旬

富山県と石川県の県境をまたぎ、約6,000本の八重桜が植えられている。「昭和の花咲かじいさん」と呼ばれた高岡市の高木勝己氏が20年以上にわたって3,000本ほどの八重桜を植栽したのが始まり。
毎年、桜が見ごろを迎える4月下旬〜5月上旬には、「倶利迦羅さん 八重桜まつり」が開催され、名物の「念仏赤餅」が販売される

やわらぎの郷(羽咋郡宝達志水町)/4月上旬

能登有数の桜名所。聖徳太子をまつる太子殿を中心に、山門や鐘楼などがある

浄蓮寺の枝垂桜(羽咋郡宝達志水町)/4月上旬【穴場】

町指定天然記念物。樹齢130年と推定される

小丸山城址公園(七尾市)/4月中旬【おすすめ】

加賀藩祖の前田利家により築かれた小丸山城。江戸時代初期、一国一城令に従い廃城となった。その後、大正時代に公園として整備される。小高い丘にあり、七尾湾や七尾の町を一望できる。ソメイヨシノをはじめ、八重桜やしだれ桜など、約250本の桜があり、春は桜の名所として賑わう

のと鉄道笠師保駅(七尾市)/4月中旬【穴場】

能登半島を走る第三セクター鉄道ののと鉄道といえば、能登鹿島駅の桜が有名だが、実は他の駅にも桜の木が植えられていて、列車に乗りながら花見が楽しめる。笠師保駅もそんなひとつ。他にも田鶴浜駅や能登中島駅、西岸駅などが見事だ。ちなみに、笠師保駅には「恋火駅」という愛称があり、これは「塩津かがり火祭り」というキリコ祭りが由来。「海側の神」と「山側の神」が海の上で逢瀬を遂げるというロマンチックなストーリーの祭りだ

のと鉄道西岸駅付近(七尾市)/4月中旬【穴場】

のと鉄道能登鹿島駅の隣が西岸駅。テレビアニメ『花咲くいろは』に登場する「湯乃鷺駅」のモデルとなった駅で、駅の東側には海が、西側には緩やかな棚田が広がっている。駅周辺には桜並木もあり、能登鹿島駅ほどではないが、ここも桜と鉄道、そして菜の花が一緒に撮れるスポットとして密かに人気

手弱女桜(輪島市)/4月中旬【穴場】

京都から伝わったといわれる手弱女(たおやめ)桜

阿岸本誓寺のアギシコギクザクラ(輪島市)/5月上旬【穴場】

県指定天然記念物で約130枚の花弁をつける菊咲の桜

来迎寺のライコウジキクザクラ(鳳珠郡穴水町)/5月上旬【穴場】

来迎寺は、創建814年という真言宗の古刹で、県の名勝に指定された庭園がある。ライコウジキクザクラは、平家物語にも登場する武将・長谷部信連(はせべのぶつら)ゆかりの菊桜で、石川県の天然記念物指定されている。菊桜は花びらが何百枚もある花が特徴で、この桜は多いものでは300枚以上の花びらがある。菊桜とは、全国的にはあまり馴染みがないかもしれないが、石川県や富山県には比較的多く、能登半島には県の天然記念物に指定された菊桜が5種類ほどある。たわわに実った果実のように、まん丸くてモフモフした花はとても愛らしく、印象的

天狗平の御所桜(鳳珠郡能登町)/4月中旬

樹齢500年と推定されるエドヒガンの巨樹(能登町指定天然記念物)

谷崎の桜(珠洲市)/3月下旬

兼六園のソメイヨシノがまだ蕾の頃、能登半島の先端近く、珠洲市で満開を迎えるのが「谷崎の桜」。海沿いの国道脇に生え、枝ぶりも見事。能登のシンボル・見附島を望む高台にあり、海を背景にたくさんの花をつける姿はとても絵になる。例年、3月中旬に咲きはじめ、下旬に見頃を迎える。品種はオオシマザクラとカンヒザクラがかけ合わされたものだとか。開花するとSNSにたくさんの画像がアップされ、地元ではこの時期、アイドル以上の人気ぶり

※石川県で未訪問の主な桜名所/大堰宮公園(加賀市)、加賀市中央公園(加賀市)、伏見川流域(金沢市)、弥生さくら公園(金沢市)、喜多家しだれ桜(かほく市)、志乎・桜の里 古墳公園(宝達志水町)、一本松公園(輪島市)、石川県輪島漆芸美術館の荘川七郎(輪島市)など、鋭意追加予定!

【富山県】

向野のエドヒガン(南砺市)/4月中旬

南砺市城端にあるこの桜は、山間部の田んぼの脇を流れる川の斜面から、スッと伸びた1本のエドヒガンの木。
かなりの大樹で、推定樹齢は100年以上だというが、エドヒガンではまだ若い方。開花に合わせ、夜はライトアップもされ、その写真を撮りに全国から写真愛好家が訪れるほど。日没直後はそんなカメラマンで賑やかですが、1時間も経つとほとんど人はいなくなる。ゆっくり桜を眺めるなら、その頃がおすすめ

桜ヶ池(南砺市)/4月中旬

池の周囲に桜が点在する

城端別院善徳寺の枝垂れ桜(南砺市)/4月中旬

樹齢約350年の枝垂れ桜

干谷の宮桜(南砺市)/4月中旬

杉林の中に一本だけ取り残されたエドヒガン

大門川沿い(南砺市)/4月中旬

11種類の桜が植えられている

五箇山相倉合掌造集落(南砺市)/4月中旬

世界遺産集落の春景色

五箇山菅沼合掌造集落(南砺市)/4月中旬

菅沼集落の花吹雪。合掌造り集落で、大きな茅葺き屋根を背景に咲く、桜の花はともても印象深く、日本の里山の春を象徴するようなシーンに出合える。かつて名古屋と金沢を桜で繋ごうと桜の苗木を植え続けた、
「さくら道」で知られる国鉄バスの車掌さんが植えた桜の木も、集落内で元気に育っている

朝日山公園(氷見市)/4月中旬【おすすめ】

約170本のソメイヨシノが咲く公園。展望台からは、桜の花越しに富山湾を一望できる。2021年には「見晴らしの丘も」オープンした

岩崎ノ鼻灯台(高岡市)【穴場】

昭和26年(1951年)に点灯した基礎上12mの白亜の灯台の周りには桜の木がたくさん植えられて、晴れた日には富山湾や立山連峰を一望できるという、写真映えする要素がたくさん集まったスポット。灯台は別名、「桜の灯台」とも。2017年には「恋する灯台プロジェクト」にも認定された

岸渡川桜並木(高岡市)/4月上旬

岸渡川の両岸約1kmに約1000本のソメイヨシノが植えられ、見事な桜のトンネルを作る。夜間はライトアップも行う

庄川水記念公園(砺波市)/4月中旬【おすすめ】

園内やその周辺ではソメイヨシノをはじめ、エドヒガンやコヒガンなどさまざまな桜を見ることができる。夜にはライトアップも行われる。園内にある鯉恋の宮の屋上にあるKOI恋の鐘にたどる通路は下が丸見えでスリリングだが、先端から眼下に眺める桜は見事。。このすぐ近くの庄川水記念公園では、桜まつり期間中、ライトアップも実施

砺波嵐山(砺波市)/4月中旬【穴場】

砺波市庄川町の庄川右岸にある三条山は、京都嵐山の景色に似ていることから「砺波嵐山」と呼ばれる。この山には数多くのエドヒガンが自生しており、春には山の斜面に点々と咲く様子が見られる。対岸から見ると桜色の水玉模様のようでもあり、派手さはないが、一度見たら忘れられない愛らしい風景。野生のエドヒガンがこのようにたくさん咲いている光景は、とても珍しい。すぐ近くの庄川水記念公園と一緒に訪れたい

県民公園頼成の森(砺波市)/4月中旬

里山の自然に触れ合える公園。苔と桜のコントラストが雅

富山城(富山市)/4月上旬

お堀に映る桜が美しい

富岩運河環水公園(富山市)/4月上旬【おすすめ】

富山市のウォーターフロントパーク・富岩運河環水公園はロマンチックな夜のライトアップが人気。桜が咲くとさらに魅力が増し、ライトアップされた桜が運河の水面にも映って幻想的だ。「世界一美しい」に選ばれたこともあるスターバックスコーヒーのテラスは、夜桜を眺める特等席

富岩水上ライン(富山市)/4月上旬

富岩運河環水公園を発着する富岩水上ラインの船上からは運河沿いに点在する桜の花を楽しむことができる。国指定重要文化財の中島閘門(船のエレベーター)を抜けたあたりと、運河を抜けた富山港のあたりの桜が見事なので、岩瀬行きの乗船がおすすめ

稲荷公園(富山市)/4月上旬【穴場】

市の中心部からも近い広大な公園で、遊具施設が充実している。中央を流れる川沿いには桜の並木が続き、丘の上にある遊具施設に登れば、桜並木の上には立山連峰が望める。さらに、この公園を挟むように、北陸新幹線とあいの風とやま鉄道、富山地方鉄道の3つの線路が走り、花見と一緒にいろいろな列車も見ることができる

富山県中央植物園(富山市)/4月上旬【おすすめ】

日本海側初の総合植物園として平成5年に開園。90種類以上の桜を見ることができ、なかでも90本のソメイヨシノがつくる桜のトンネルは圧巻。桜並木の向こうには立山連峰のパノラマが広がる。「花のプロムナード」と名づけられたこの桜並木は、見頃にあわせて夜間ライトアップを実施

神通川さくら堤(富山市)/4月中旬【おすすめ】

神通川の中洲を囲むように、堤に800本の桜が4.8kmにわたって植えられている「神通川さくら堤」。残雪の山々を望む風光明媚な田園地帯に、神通川右岸の「塩の千本桜」と合わせ、1000本もの桜がつくる花の回廊は圧巻

塩の千本桜(富山市)/4月中旬

神通川の右岸・塩の堤防に200本の桜が約1kmにわたって植えられている「塩の千本桜」。「神通川さくら堤」の800本の桜と合わせ、1000本の桜が続く

城ヶ山公園(富山市)/4月中旬【穴場】

坂のまち八尾の南東にある小高い山の一帯が公園となっていて、春は桜の花に包まれる。山頂付近にはさまざまな種類の桜を見ることができ、また、眺めも素晴らしく、八尾の町並みや富山平野、立山連峰、富山湾を望む

常西用水プロムナードの桜並木(富山市)/4月中旬

常願寺川の用水に沿って整備された遊歩道沿い約1kmに渡り、見事な桜のトンネルが続く。水量の多い用水の流れは迫力満点だ

魚津桃山運動公園(魚津市)/4月上旬

公園からは日本海を望む

百年桜(黒部市)/4月中旬

樹齢60年ともいわれるソメイヨシノで100年を超えるのは珍しい

入善乙女キクザクラ(下新川郡入善町)/4月中旬

杉沢の沢杉内にある

黒部川堤防桜堤(下新川郡入善町)/4月中旬【おすすめ】

黒部川堤防桜堤は、約170本の桜が黒部川の堤防に植えられ、その距離は1.2kmにも及ぶ。残雪の後立山連峰を背景に、延々と続く桜並木は実に見事。桜並木と水路に沿った散策路を歩いたり、堤防の上の道をドライブしたりしながらも花が楽しめる

宮野運動公園(黒部市)/4月中旬

黒部宇奈月温泉駅を発着する北陸新幹線のビュースポットとして知られる公園。新幹線の向こうには黒部川扇状地や富山湾を一望できる。園内には約950本の桜が咲き乱れ、「桜まつり」が開催される

立山黒部アルペンルート・黒部平(立山町)/6月【おすすめ】

北陸の桜を撮り歩いている私にとって、ずっと念願だったタカネザクラを、今年ようやく撮影することができた。この桜、中部山岳国立公園の標高の高いところでは7月でも花が見られ、実は桜前線を締めくくる桜とも言われることもある。写真は標高1,828メートルの黒部平付近で撮影。立山連峰と後立山連峰が聳えるスゴイ山の中だが、ロープウェイの駅から歩いて数分で辿り着ける

※富山県で未訪問の主な桜名所/駒つなぎ桜(氷見市)、二上山公園(高岡市)、下条川千本桜(射水市)、剱折戸菊桜(中新川郡上市町)、松倉城跡(魚津市)、あさひ城山公園(下新川郡朝日町)など、鋭意追加予定!

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祝! 北陸新幹線敦賀延伸 金沢でお花見〜人気スポットから穴場までおすすめ26選〜

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【富山・石川】北陸の桜名所図鑑 2022年に一気にめぐってきた編〜2023年の花見スポット探しに使える! 穴場スポット情報も〜

【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑 2021年に一気にめぐってきた編

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
*取材・編集のご依頼はこちら

【富山・石川・福井】北陸の桜名所図鑑 2021年に一気にめぐってきた編

桜好きにはたまらないのが北陸

 北陸は緯度の違いよりも標高差の違いから、桜前線が長く留まるのが特徴。

 福井市や金沢市、富山市といった街なかの桜(ソメイヨシノ)の見頃は4月上旬。だいたい東京や大阪などから1週間遅れという感じですが、これは年によって結構違います。そもそも今年は開花が非常に早くて、さくら名所100選に選ばれているような人気お花見スポットは3月中に満開となっていましたので、びっくり。

 北陸では自生する野生の桜の種類が多いのも特徴。早咲きのキンキマメザクラ、ソメイヨシノとほぼ同じくらいに咲くヤマザクラやオオヤマザクラ、エドヒガンなど、そして忘れた頃に咲くカスミザクラ、立山や白山で6月や7月に咲くタカネザクラなど。 また、菊桜といわれる花びらが何百枚もある桜もいろいろ種類があり、さらに、固有の桜も多くあって、しかも新たに発見されるものも多く、桜好きには話題に事欠かないエリアでもあります。

北陸でのお花見の特徴

 新型コロナウイルス感染症の影響で、全国的に花見宴会は自粛となりました。しかし、北陸地方では、花見をしながらの大宴会というのはもともとそれほどポピュラーではなく、東京・上野公園みたいに宴会の場所取りに奔走するようなことは一部を除いてほとんどありません。桜が咲く公園や河川敷をぶらぶら散歩して、歩き疲れたらベンチなどに腰掛けて桜の花を楽しむ、そんなお花見スタイルが多いように思えます。芝生の広場があるような場所では、ピクニック気分でお花見を楽しむ少人数のグループもよく見かけますが、夜はまだ寒いからか、レジャーシートを敷いて宴会をしているようなグループは東京などに比べると圧倒的に少ないような気がします。

2021年にめぐった北陸の桜名所を時系列で一挙公開

 今年回ってきた北陸の桜名所を一挙公開! 北陸の桜の見頃はいつ? おすすめのスポットは?などなど、2022年以降の花見のご参考になれば幸いです。

○2021/3/29 富山城【富山県富山市】
 春は桜が見事。堀の水面に反射する花も美しい(この日は風が強くて反射せず)。
 https://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=100434

○2021/3/29 松川公園【富山県富山市】
 約450本のソメイヨシノが植えられ、遊覧船から眺めることもできる。日本さくら名所100選。
 https://www.info-toyama.com/spot/11035/

○2021/3/31 味真野小学校 校庭の桜【福井県越前市】
 校庭のど真ん中にエドヒガンの大樹が1本。樹齢140年以上という堂々たる木ですが、エドヒガンとしてはまだまだ若木なのだとか。
 http://school.city.echizen.lg.jp/ajimano/index.cfm/1,html

○2021/3/31 花筐公園【福井県越前市】
 世阿弥の謡曲「花筐」の舞台として知られるここでは約1000本の桜が咲き誇る。桜の花越しに眺めるいらかの波が印象的。
 http://welcome-echizenshi.jp/tourism_detail/kakyoukouen/

○2021/3/31 吉野瀬川【福井県越前市】
 吉野瀬川の両岸から枝を伸ばす見事な桜並木。桜の木の密集度がすごい。
 http://welcome-echizenshi.jp/tourism_detail/sakura-city/

○2021/3/31 陶の谷駅跡【福井県丹生郡越前町】
 かつてここを走っていた福井鉄道鯖浦線の駅跡。レールの一部とプラットフォーム、駅名標が残り、長閑な田園風景を背景に枝ぶりの良い桜が花ひらく。
 https://www.town-echizen.jp/spot/spot01Detail.php?id=497

○2021/3/31 法華寺 しだれ桜【福井県丹生郡越前町】
 樹齢約100年の立派な枝垂れ桜がある。
 https://www.town-echizen.jp/spot/spot01Detail.php?id=457

○2021/3/31 足羽川 桜並木【福井県福井市】
 約2.2kmという桜並木が続く。桜のトンネルの中をゆっくり歩き、疲れたら河川敷で一休み。日本さくら名所百選の一つで、北陸を代表する花見スポット。
 https://www.fukuicity-navi.com/sakura/?story=lightup-07

○2021/4/1 大乗寺丘陵公園【石川県金沢市】
 金沢平野を一望できる公園。初夏のツツジが有名だが、桜も見事。高峰譲吉博士ゆかりのワシントンから里帰りした桜も植えられている。
 https://www4.city.kanazawa.lg.jp/29004/park/park/daijyouji.html

○2021/4/1 兼六園【石川県金沢市】
 日本さくら名所百選の一つに選ばれた北陸を代表する桜の名所。開花時期に合わせて夜間はライトアップも行われる。http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/

○2021/4/1 金沢城公園【石川県金沢市】
 兼六園の向かい、石川門周辺の桜はもちろん、内堀沿いの桜並木がみごと。こちらも夜間ライタップが行われる。http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kanazawajou/

○2021/4/2 犀川【石川県金沢市】
 金沢市内を流れる犀川の両堤には桜並木が続く。観光客は少なく、市民がのんびり花見を楽しんでいる。
 https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/spot/detail_10118.html

○2021/4/6 あさひ舟川「春の四重奏」【富山県下新川郡朝日町】
 約280本のソメイヨシノとチューリップ、菜の花、そして残雪の北アルプス・朝日岳が織りなす春の絶景(トップの写真)。
 https://www.asahi-tabi.com/sijuusou/

○2021/4/6 高岡古城公園【富山県高岡市】
 日本さくら名所100選。園内随所で桜が見られ、特に濠沿いは見事。富山固有のコシノヒガンザクラも。訪れた時は見頃を少し過ぎていた。
 http://www.kojyo.sakura.ne.jp/index.shtml

○2021/4/16 石川県農林総合研究センター林業試験場樹木公園【石川県白山市】
 約130品種、約900本の桜があり、北陸随一の規模。種類が多いので長い期間、桜の花見が楽しめる。珍しい品種も多い。
 https://www.pref.ishikawa.lg.jp/ringyo/about/park.html

○2021/4/20 倶利伽羅公園【石川県河北郡津幡町】
 「昭和の花咲かじいさん」が、20数年間に渡って植えたものをはじめ、約6,000本の八重桜が咲き誇る。
 https://www.hot-ishikawa.jp/event/21192

○2021/4/27 兼六園【石川県金沢市】
 花弁が300枚以上もあるケンロクエンキクザクラ。天然記念物だった初代は枯れてしまい、現在は2代目。例年だとGWに見頃を迎える。
 http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/

○2021/5/4 来迎寺【石川県鳳珠郡穴水町】
 花弁が200〜300枚重なる県の天然記念物に指定された桜。花が開くにしたがって、色が変わっていく。
 http://noto-raikouji.net

筆者が書いた「北陸の桜」や「金沢の四季の花」の記事はこちらでもお読みになれます

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●金沢市観光公式サイト「金沢旅物語」
金沢には花の名所がたくさん!春夏秋冬、見逃せないお花スポット徹底ガイド

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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【column】こんな時だから、金沢の観光について考える

新型コロナウィルス感染症の蔓延により、世界中の観光が大打撃を受けている

観光産業は観光や宿泊の施設だけでなく、交通インフラ、飲食店、またそこと取引がある業者など、実は裾野が非常に広い産業で、社会全体に及ぼすダメージは大きい。

関係者の中には、「再開したらすぐに観光客が戻ってきてくれるのだろうか?」という心配もあるだろう。まずはコロナウィルスを収束させることが第一だが、その先の経済活動を考える上で、今から準備をしておくべきことがある。

実はこの時期、漫然と待っていてはいけない

旅行の良さ」、そして「旅行に行きたい」と思う気持ちを、多くの人に持ち続けてもらうために、やるべきことがあり、それを行ったかどうかで、収束後の動向に大きな違いが出てくると考える。

何をすればいいのだろうか?

人が動けない今、動かせるのは情報と、そして物だ。「疲弊した国民の心に寄り添える」存在であったり、あるいは「こんな魅力的な場所や食べ物があったのか」という発見をもたらす情報発信や、物の提供だったりを積極的に行っていくことは効果があると思う。

実際、Web上で見ると、例えば長野県が「観光地が感染防止にできること」として始めた「#おうちでながの」プロジェクトなど、自宅で旅行に行った気分に浸ってもらおうとする取り組みが積極的になってきている。これらはもちろん、収束後に真っ先に行きたい観光地としての印象づけという意味合いも強いが、外出したいが出かけられない人たちに癒しと希望をもたらしてくれる、ありがたいものでもある。

また、株式会社ブランド総合研究所(東京都港区)では、観光客の激減により、余剰在庫となっている全国各地の食品を、専用ECサイトを通じて販売、自宅にいながら観光気分を味わってもらおうというプロジェクト「おうちで観光地グルメ」を期間限定でオープンさせている。これは商品を提供する側にとっては消費の落ち込みをカバーしてもらえる救世主であることはもちろん、自社の魅力ある商品をアピールできるチャンスにも通じ、家にいながら、味覚で旅行気分に浸れるのは、娯楽が少ない中では何より嬉しい。

今は、このように社会貢献の役割を持たせた「出かけない観光」の楽しみ方を提供していくことで、旅行に行けるようになった時に備える、そのことに注力しているところは、きっと後々の旅行者来訪数にも反映できるのではないかと思う。

どんな人に来てもらいたいか、イメージすることが重要

そしてもう一つ、今だから考えたいことがある。それは、収束した後の観光のあり方だ。

かつてバブルが崩壊した頃を境に、観光形態は団体旅行から個人旅行へとシフトしていった。しかし、効率よく稼げる団体旅行への執着が強かった観光業界には、年々減少していく団体旅行の現実をみても、「いつかはまたあの時代が戻ってくるのではないか?」そんな妄想が捨てられなかった。

その結果は、団体客への依存体質を改めることができなかったホテルや旅館、土産物店などの倒産や廃業である。廃墟となった旅館などが温泉街の景観を崩し、さらには倒壊の危険が迫るなど、今なお地域に大きな影を落としているところも少なくない。

現在、日本の観光地の多くはインバウンドによって、新たなバブルのような状況になっている。京都のように、観光客が来すぎて雰囲気を壊したり、市民生活に重大な影響を及ぼしたりすることから、「観光公害」という言葉まで生まれている。わざわざ訪ねてきてくれた人たちに対して「公害」呼ばわりをすることに、個人的には強い抵抗を感じるが、確かにこの状況は、訪れる方にも迎い入れる方にもメリットはなく、何らかの改善をしないといけないのは事実である。

例えば金沢を例にとって考えてみる。新型コロナウィルスの問題が起こる前、まちは多くの観光客であふれ、近江町市場やひがし茶屋街など、一部の観光地ではオーバーツーリズム(観光公害)の問題が起こり始めていた。

業を煮やした近江町市場のある店先には、観光客を愚弄するかのような警告も登場。その内容の稚拙さが、市場全体のイメージをダウンさせてことを記憶している人もいると思うが、実際、近江町市場の鮮魚店で話を聞くと、「観光客はほとんどが何も買ってくれない」と嘆いていた。近江町市場内には観光客をターゲットにしている店とそうでない店とが混在していて、現実としては観光地化されることに抵抗がある店もあると聞く。

近江町市場に限らず、2015年に北陸新幹線が開業し、想定を大きく超えた観光客が押し寄せ、さらにここ数年のインバウンド・ブームで、現状の対応に振り回されて、先のビジョンを考える余裕がなかったのだろう。しかし、今こそ、そういった態勢を考え直してみるタイミングだと思う。

一方で、金沢以外の周辺エリアへの波及効果は期待したほどではないという実情や、これはあくまでも個人的な印象だが、金沢自体の魅力度が下がってきているような気がするのも気になる。

それは何か?

金沢は新幹線開業で多くのテレビや雑誌で頻繁に取り上げられるようになり、知名度や人気度が急上昇した。しかし、そこで取り上げられるものの多くが、近江町市場の海鮮丼や、冬の加能ガニ等々、反響の大きいものばかりを、繰り返し繰り返し発信してきた。
その発展形として、グルメのまちとして金沢のイメージも定着したことは歓迎だが、それも多くは散発的なお店紹介に終始していて、しかも「京都っぽくていい!」みたいな位置づけになっているのも否めない。
そこにきて、インバウンド・ブームで兼六園などは日本人よりも外国人であふれ返る、まさに金沢自身が、金沢らしさを見失ってしまっているのではないだろうか。

「金沢らしさって何?」 答えられる人はどれだけいるのだろうか

前段が長くなってしまったが、「収束した後の観光のあり方」を、今こそ考える時間と捉えるべきかと思う。来る人全てを拒まずという体制では既に無理が出てきつつある現状、この先は「選別」を考えるべきなのかもしれない。

金沢だったら、グルメ、そして金沢21世紀美術館が創り上げたアートという2つの強いイメージがある。
例えばこれに沿った興味のベクトルを持つ人へ積極的にアプローチして、そのイメージをさらに強めてブランド力を高めていくのもいいかもしれないし、単純にいわゆる「富裕層」を意識した展開を厚くしていくということもありだと思う。あるいは広域での連携を行い、周辺地域へも観光客に足を延ばしてもらう工夫を行い、分散化や経済効果の波及を考えるのもいい。

なお、「金沢といえば歴史と文化では?」と思われるかもしれないが、金沢をどんな切り口で紹介しるとしても、その根底にあるのは歴史と文化で、すべての要素が歴史や文化と関わりを持たせて紹介すべきであり、それが金沢らしさを醸成してくれるはず。

バージョンアップした金沢に乞うご期待

先にも申した通り、「北陸新幹線ができて近くなった京都みたいな和風情緒漂う観光地」 実はこんなイメージが否めない金沢。

物見遊山的な旅行から、自分の興味あるテーマを深掘りしていく旅行へと、旅行者の意識が大きく変わってきている今を意識して、金沢らしさや金沢だからということをもっと前面に押し出していかないといけないのではないか、そんな危機感さえ覚える。

金沢はもちろん「京都のコピー」ではない。金沢の人は当然そう思っているが、実はそれは外にはあまり伝わっていない。もっと自信を持って「金沢らしさ」をアピールしていかねばならず、そのために、今このタイミングで、金沢の魅力をそれぞれが考え、実行に移す準備を行う期間だと思っている。

金沢のポテンシャルは、金沢の人が思っている以上に高い。

今を乗り切るのに精一杯かと思うが、一人でも多くの観光に直接、あるいは間接的に関わる人に、少しでもそのようなことを考えていただき、それを共有できる場ができたらいいなと願っている。もちろん、金沢に限ることなく、石川県、北陸、あるいは全国でも。

私は観光学の専門家ではない。「何を戯言を!」と思われる方もいるかもしれないが、自分の感覚や取材でさまざまな人の意見を聞く中から、導き出したものを披露させていただいた。

私自身も旅行を得意とするライターとして、引き続き、金沢や北陸の魅力を感じてもらえる情報発信を続けていくつもり。
それは、皆さんに、「また旅に行きたい!」という思いを忘れてもらわないために、観光地に暮らすライターがするべき使命だと思っている。

それよりまずは、皆さんにこの苦境を乗り越えていただくことを心から祈っている。

写真と文若井 憲 Ken Wakai
フリーで編集・ライター・カメラマンを兼務。得意ジャンルは旅行と文化。金沢市在住で北陸地方なら、得意ジャンル以外も実績は多岐にわたる。撮影ができるのも強み
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【金沢観光】今年の秋はどこで見る? 地元フォトライターがおすすめする紅葉名所

城下町・金沢の秋といえば、しっぽりと紅葉見物なんていうのもいい。
そもそも、兼六園以外には、誰もが知っている紅葉名所と呼べるような場所も少ないかもしれない。

ここでは、2019年、「金沢の紅葉見るならココ!」というオススメの場所を、兼六園から金沢市民でもほとんど知らない穴場まで、ストック写真の中からピックアップ。

*2023年に一部の内容を改訂しています。

医王山 一足早く紅葉を楽しむならココ

富山県との県境にある県立自然公園。大自然が広がって、ここが金沢市というのもにわかに信じ難い。医王山ビジターセンターから大池や三蛇ヶ滝へ、ハイキングと紅葉狩りが楽しめる。紅葉は例年10月下旬〜11月上旬が見頃。

市民の憩いの場・卯辰山は紅葉も見事

金沢城から卯辰の方角にあるので卯辰山と呼ばれるようになった。江戸時代は防犯上の理由(諸説あり)からハゲ山だったが、今は鬱蒼と気が茂り、紅葉も見事。市街地の眺望と紅葉の両方が楽しめるのもいい。例年11月中旬〜下旬が見頃。

まちなかで美しい紅葉が見られる場所

金沢のまちなかでも美しい紅葉を楽しめるスポットがそこかしこにある。
紅葉の見頃は例年11月中旬〜下旬。アメリカ楓の並木のみ11月上旬

ちょっと郊外の知る人ぞ知る、穴場の紅葉名所

住宅街や郊外の山など、知る人ぞ知る紅葉名所を紹介。

王道の金沢城公園と兼六園の紅葉はやはり美しい!

金沢城公園と兼六園の紅葉は、一度と言わず、二度、三度と見たくなる美しさ。一日ずつ彩りが移ろう様子も楽しめるので、ぜひ、何度も足を運んで欲しい。見頃は11月中旬から下旬だが、金沢城の方が少し早い気がする。夜のライトアップも見逃せない。

以上、今年の紅葉狩りのお出かけの参考になれば嬉しい!

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